出版社内容情報
日本兵三万一〇〇〇人余のうち、撤収できた兵わずか一万人余。この島は、なぜ《日本兵の墓場》になったのか。精神主義がもたらした数々の悲劇と、「敵を知らず己を知らなかった」日本軍の解剖を試みる。
NHK取材班[エヌエイチケーシュザイハン]
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内容説明
ガダルカナル島は、「日本兵の墓場」となった。一木支隊は、数十倍の火砲、二倍の兵力の米軍に、夜間白兵突撃を試みて、全滅した。犯すべからざる『歩兵操典』、「素質劣等なる敵にたいする、必勝の信念の勝利」という精神主義であった。ガダルカナル島の日本兵三万一千余人の内、撤収できた兵一万人余。戦死者五、六千人、大半が栄養失調、マラリヤ、アメーバ赤痢などで倒れていった。
目次
1 知られざる島
2 見たことのない戦闘
3 汝の敵を知れ
4 繰り返される失敗
5 袋小路の現実
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
77
当初、“ガダルカナル”など、地図にも載っていないような小さな島に日米とも大きな関心がなかった。しかし、日本海軍はミッドウェー海戦に大敗し、太平洋上における防衛体制に変更を余儀なくされる。一方米国は、政治的関係上(この時ルーズベルトは大統領の中間選挙中であり、アピールのため日本に対する反撃の狼煙が欲しかった)、一転、重要な要衝となった。そして米軍は大戦初となる軍隊、海軍と陸軍の両面を併せ持つ海兵隊を創設し、これを実験的にガダルカナルへ実戦配備して、その後の作戦の中心的役割を担わせることを目論んだのだった。2016/03/19
へくとぱすかる
49
失敗に反省せず、決定した事柄に固執する姿勢。アメリカを知ることもなく、知ろうともせず、思い込みと期待で動く。それが多くの将兵を死に追いやった原因だと、多くの資料から明らかにされる。海外への輸送が必須な日本は、対外戦争をするのに圧倒的に不利だったと第1集にも書かれている通り。今の日本にもはびこる無責任のシステムを思うと、学ぼうとしないのは今の我々も同じかもしれない。2017/08/12
nnpusnsn1945
45
2020年の8月、宮城県護国神社で、ガダルカナルにて戦死した安田憲一陸軍大尉(第二師団歩兵第四連隊)の手記が残されている。「死んでも餓鬼になるんぢゃない」とあった。「勇ましい」展示より、これだけが一番心に残った。愚かな作戦がこの惨状を生み出したのだ。今年は暗いことが多かったから明るい本を読みたかったが、感染者がかなり増えたのを見て本書を読んだ。失敗しても権力に居座り、一号作戦でまた災厄を起こした某参謀のごときは現代もまだ生きているのだろうか。万人が戒めとして本書から肝に命じてほしい。2020/12/31
藤瀬こうたろー
23
最近、太平洋戦争を描いた作品や戦闘の指揮をとった人物の話を読む機会が多いですが、この本で取り上げられているガダルカナルの戦いも大敗北を喫した戦闘の中でも象徴的な戦いであり、今回改めて読んでみました。しかし、敗北や失敗という言葉だけで片付けるには余りに悲惨すぎ、読み進めるうちに暗澹たる気分になってしまいました。精神論だけで解決しようとし、少しでも正論を言うと消極的ととらえられ、現実を認めずに敵を過小評価し、勇ましいことを言う者だけが重用される。日本の組織が陥りがちな問題点を改めて認識することができました。2020/04/20
CTC
13
シリーズ第2巻はガ島戦をモチーフに旧軍の悪弊を描く。16年11月中旬、大本営政府連絡会議で策定された“対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案”は、大戦の決着を模索するほぼ唯一の中長期プラン。要旨は①資源確保によって長期戦体制を築きつつ、米艦隊を撃滅する。②援蒋ルートを絶ち蒋政権を屈服させる③独伊が英を降す(プランが他力本願とは…)④支と英が屈すれば米は継戦意思をなくす、といったもの。①の達成には、ミッドウェー作戦に加え米豪の遮断が必要で、ゆえにガ島に拠点をと。とすればやはりガ島こそ決戦場だったわけで…。2016/07/02