出版社内容情報
博物学・民俗学・語学・性愛学・粘菌学・エコロジー……広範囲な才能で世界を驚愕させた南方熊楠。そんな日本史上最もバイタリティーに富んだ大怪人の生きざまを天才・水木しげるが描く。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てち
135
奇人、南方熊楠の生涯を漫画でわかりやすく解説している作品である。主に、彼の晩年期についての描写が多い。幼少期についての記述があれば尚良かったが、一通り熊楠の一生を知れたので満足である。2021/05/01
アン・シャーリーこと寺
81
私の南方熊楠熱が少し再燃して思わず再読してしまった。90年代の熊楠ブームを象徴する一冊。オススメしまくりだ。猫の猫楠を解説役に、熊楠の無数の逸話(くだらない事が多い)やその学問(下品な事が多い)が散りばめられた伝記漫画。駄目な大人(気の良い人ばかり)が沢山出て来て面白い事この上ない。唯一、長男の発狂と熊楠の涙のシーンは胸をわし掴みにされるほど切ない。南方熊楠の魅力をきちんと伝える伝記の随一である。2013/12/27
吉田あや
75
知の怪人にして学問の遊び人、南方熊楠の生涯を水木しげるさんが漫画化した最高の一冊。粘菌、博物学、民俗学、18か国語にも及ぶ語学、図譜を描く画才と、様々な才能を見せた天才は、強烈にして奇人。興味に突き動かされ、生と死という大いなる現象の奥に潜んでいるものは何者かを突き止めることに苦心惨憺した熊楠。霊魂・妖怪といった未知を目に見えないからと否定するのではなく、そこに何かを見出そうとする好奇心と研究魂の揺るぎない信念に胸を打たれる。(⇒)2020/02/27
TCD NOK
62
もう何と表現していいのやら。若いときはロンドンに留学し、学者相手に論争で一歩も引かず、帰国してからは粘菌の研究(学術的はともかく、これが何の役に立つか分からなかった)に没頭。家にいるときは来客時でもフリチン、いつでもどこでもゲロを吐く(ゲロにも研究対象の菌があるため、片付けさせなかった)。猫語と幽霊語を理解し、もうアッチ側の人間かと思えば、昭和天皇が地元紀伊田辺に行幸されたときは、拝謁を許され粘菌研究の成果を披露している。ほぼ同類のような水木しげる先生だからこそ、この人をここまで描ききれたと思う。2020/07/15
アン・シャーリーこと寺
56
再読。手塚治虫の漫画を読もうと思ったが、やはり水木しげるが恋しくなり本棚からこれを出す。水木しげる後期の良作である。改めて読むと、台詞回し等の独特な文体が水木しげるらしさである。思えばこの味に惹かれてファンになったのだ。忠実なる伝記ではなく、奇妙な創作部分がまた楽しい。熊楠さんとその周囲の人達が実に愉快。熊楠さんのみならず、周囲も奇人だらけ。この輪の中に入りたいと思う。どんな人間でも受け入れてくれそうな世界がここにある。すごく下世話なユートピアである。水木漫画の中でも好きなものの1つだ。またきっと読む。2015/12/04