内容説明
1793年2月、30万募兵令が全国に向けて発布され、ヴァンデ地方は、ついに武装蜂起した。貴族としての誇りに生きる21歳のアンリは、10万のヴァンデ軍の先頭に立つ。それを迎え討つは、革命を信じ、大量殺戮をも辞さぬ覚悟の公安委員会代理ジュリアン19歳、そしてアンリの敵として対峙せざるをえなくなった西部方面軍最高責任者ニコラ25歳。3人は激突を回避できるか。祖国に身を捧げる若き情熱を描く力作長編、完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅香
37
誰が、どこで間違え、あるいは故意に歪ませたのか。華やかなイメージのフランス。その土壌は暗黒な雲が漂う。革命は自由を勝ち取る正義だと思ってた。正義でも悪でもない。ただおびただしい血が流れたのをその土地は知っている。とても冷静に。家族で夕食を食べる日々が続くのを地球上の全ての人が望む。ヴァンテ軍の鞘と革命軍の剣は一つになるのか。ルイ16世が処刑された背景、その後の歴史はこんなにも悲劇なんだと知ってショックだった。勝った者が正義の歴史を綴る。でも…。『百年、二百年後の評価において、あなたはただの大量殺人者です』2015/11/22
しーふぉ
19
次々とヴァンデの好漢たちが散って行く。皆殺しにすることが革命なのだろうか?鞘と剣が一つになったことだけが救い。2017/12/27
H2A
19
革命期ヴァンデの叛乱を題材にした歴史小説。登場人物はほとんど実在。ロベスピエールやサンジュストなど革命の立役者たちがよく書けていて、後半の叛乱軍の壊走の憂鬱な部分まで含めて長丁場も飽きさせない。それに若きジュリアンが狂信する革命の理想と現実にぞっとさせられる。2017/02/19
noémi
14
ヴァンデ軍はいわば、ほかの地域の王党派への見せしめのために全滅させられたに違いない。ヴァンデ軍の首領だったカトリノーが言うように、農民は純粋だが、迷信深く訓練された兵隊のように機能的に動けない。というわけで7万もいたヴァンデgンはじわじわと自滅していく。トップの仲間割れ、スパイの宣誓僧、そして理詰めで情のないジャコバン党員。しかし、ロベスピエールとサン・ジュストはすべての罪をロベスピエールに尽くし続けたジュリアンに擦り付けて口を拭ってしまう。だが結局、その後すぐにこの二人も処刑されてしまうのだが…。2017/05/25
HoneyBear
12
テンポが速すぎかとも思ったが、ぐいぐい引き込まれる。フランス革命の後フランス西部で生じた農民の反乱とその顛末が史実にほぼ則って描かれる。フランス革命の見方が変わった。18世紀に「自由」の名のもとに、農民の大虐殺が行われていたとは。2013/10/15