内容説明
俵万智の短歌と浅井慎平の写真が織りなす透明な愛の世界。『とれたての短歌です。』につづく2人の清冽な作品集、第2弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
285
写真家、浅井慎平とのコラボレーション第2弾。フィクショナルな歌もあるようなのだが、やはり基本的には、この時期(1989年)の俵万智さんの恋をリアルに詠ったものが中心だ。これらの歌群を見ると、どうやら当時の万智さんは報われぬ恋(それを承知の上での恋でもあるが)の渦中にいたようだ。「さよならの 予感の中で気がついた 私あなたの妻になりたい」などは、けなげでもあり、せつなくもある。短歌の調べに乗せることは、同時に自らの気持ちを形にすることであり、私の感情はこんな風だったのかと気付かされる行為でもあるのだろう。2016/05/13
ちはや@灯れ松明の火
49
安心させたい、心配させたい、電話越しに風邪の具合を伝えながらふとよぎる予感。通話と共に何かが切れる音を聞きたくなくて、耳を離す。海を見ているふりをしていた、仮免許をあげた金曜日。大切な言葉はいつも短い。潮風だけが吹き抜けていく、忘れるはずのない日曜日。「それだけです」、それだけじゃないのに。会えずに終わった日を数えて、ゆっくりやってくる約束の木曜日。少しずつ少しずつ、薄めるような減点法で。あなたも世界のどこかで一人、一週間ぶりに声を聞く土曜日。さよならと、鳴りはじめるピアノ。あなたがいない、私がいない。 2014/04/13
湘子
37
俵万智の短歌と浅井慎平の写真が織りなす透明な愛の世界(表紙裏より)。電話にまつわる次の三首、「あなたから見えない女になりたくて受話器をとらずにいる昼下がり」「あきらめて受話器を置こうとするその瞬間君につながりそうで」「チンという音をたてずに置く受話器なにかが切れてしまわぬように」が好き♪今は携帯だから時代を感じるけどいいんだよなぁ(´ー`) あと「言葉とはもどかしいもの親切と愛の違いの違いがほしい」「もう次に会う日のことを考えている目の前に君がいるのに」がお気に入り♪ 何度も読み返してる一冊です☆2014/11/03
tu-bo@散歩カメラ修行中
29
サラダ記念日の爽やかさから、所々に切なさ、女の業の深さを感じてしまった。浅井慎平の写真は彼女の歌に寄り添うような、描くような写真で、彼女の短歌と共鳴している。俵万智さんの情炎を感じさせる恋の歌集です。しかしこの歌集を挨拶以上恋文以下の状況で、女性に送るのは、いかがなものだろう。手紙ごとブックオフに出されるのもやむを得ないか。(T_T)2016/05/07
双海(ふたみ)
12
「連絡のとれないことが寂しくてたいした用などないのだけれど」・「散ってゆく恋ならどうぞでもせめてこのチューリップよりゆっくりと」・「八月の恋人たちは旅をするまだ書かれない小説のため」2022/07/23