内容説明
両親の愛を一身に受け、芸妓屋という家業に悩む、病弱で繊細な少女時代。17歳で結婚ののち渡った満州で終戦、苦難の引き揚げ。「創作」への目覚めと静かな決意。離婚、上京、そして作家として多忙な日々―。宮尾文学の精神風土をつちかった、起伏にとんだ実体験を、昭和の流れに沿ってたどる自伝的エッセイに、数々の名作の背景や登場人物の素顔まで、「人と作品」の全貌がうかがえる文章を加えた。淡々とした語り口の中に、「生」に向ける強靱な意思と弱者への深いまなざしがあふれ、読む者の心を感動でうめる一書。
目次
第1章 時の流れの中で
第2章 人間として、女として
第3章 作家として
第4章 心ゆたかに生きる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
及川まゆみ
2
作品を読んだことはあったが、随筆を読むのは初めて。かなり早いご結婚のの渡満。そしてすぐに終戦。収容所での長い暮らしを経て帰国……そして宮尾さんの小説の核ともなっている生家のお話など、とても興味深く読んだ。2014/01/09
ライム
1
本読むのも文章書くのも一人きりでするものだから、読書家とか作家は孤独を好み志向する人と思われがち。そこに著者の下記記述に触れ、驚きと憧れを感じずにはいられない。「私が最も嫌うものは孤独。良い人間関係をいつも保つのには、煩わしさもあるだろう。でも同じ苦労なら、人間同士の関わり合いで泥まみれになる事が生きてる証。骨がらみのつき合いには愛情も憎しみもやってくる。でもはげしくぶつかり、悔いにかられ恥を晒して生きてゆく姿にこそ、私は強い魅力を感じる。」2024/05/19