内容説明
夜空に吸い込まれる炸裂音、彷徨う血塗られた魂。東欧、霧のトランシルバニアで「わたし」は男たちの呼び声を聞いた―。ベルリンの壁の崩壊から5年。「ドラキュラの息子たち」という殺戮集団。「わたし」の過去を呼び醒ます、かつての同志たちの亡霊。「わたし」に何を求めるのか?歴史に葬られた男たちの復讐と反逆が始まる…。情念が冴える、船戸ハードボイルド読者圧倒の力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Katsuto Yoshinaga
10
「おれはロム人だ、ツィガーヌだ、ジプシーなんだぞ。アングロサクソンの理想なんか根っから信用しちゃいない」と、受け取った報酬を私用に供さず、全てを世界ロム人権会議に寄付するジュレフは語る。この脇役に痺れた。チャウシェスク政権崩壊後のルーマニアで、マジャール人のハンガリー帰属を目指す「ミクローシュ」、チャウシェスクの負の遺産「ドラキュラの息子たち」、壁が崩れた後の世界に居心地の悪さを感じる「わたし」、そしてかつての上官ビッグフォードと恋人クラウディア、複数の情念が交錯する。佳作ながら、さすが大船戸。痺れた。2021/01/02
けん
3
チャウシェスク体制崩壊後のルーマニアの血なまぐさい世界。ドラキュラの息子たちという殺戮集団の狂気さが際立っている。歴史の陰に隠れたこんな集団、本当にいそうだよな。久々に読んだ船戸与一さん、やっはりおもしろいな。2014/06/25
キーにゃん@絶対ガラケー主義宣言
2
2002年3月19日