内容説明
それは若い沙門であった。白い肌。彫りの深い顔貌。女に劣らぬ柔軟な体躯を持つ僧形。名をシッダールタ、後に悟入し仏陀となるその人である。彼の求めるものは唯ひとつ、真理即ち涅槃の境地へ向うことである。とあの月の夜。故郷から離れて遙か。シッダールタ、は、涅槃の果実が実を結ぶという雪冠樹の聳立つナ・オムと呼ばれる魔界へと旅立つ。しかしそこは、この世にあらざる因果の法が織りなす悪夢の結界であった。襲いかかる異形のもの達。寿命を知らぬ百老鬼。若き僧人の悟りへの途は遠く果てなく闇に包まれていた―。人気頂点の著者が独自の宇宙観を史実に照射し、卓越した発想で綴る万華鏡の如きＳＦ冒険譚ここに登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
miroku
24
三読。視覚的イマジネーションが素晴らしい！2018/06/29
袖崎いたる
7
人類の英雄である仏陀が主人公のエロありグロありファンタジー。登場人物が殺されそうになるとほぼ殺され、犯されそうになるとほぼ犯される。その意味では反ロマン的だ。文章は息の短いスタイルながらも、情景喚起のポエジーが煌めく。不満というか不安は主人公である仏陀の「人間」が感じられないこと。その点からはこの物語は伝承譚的なよそよそしさのある観があるかも。とはいえ一個の美味な幻想譚である。後の「存在とは何か」を問うための仏教的枠組みの素地も窺える。それと読んでいて思ったのはこの作品は明らかに男性文化的だなということ。2016/01/16
azuemu
3
作者の処女長編だそうです。それで主人公が若きゴータマ・シッダールタって恐れ多いとか思っちゃったけどこういうのも有りだったか、とおもわず膝を打ってしまった。内容がひと癖ある仲間たちと魔界へ赴いて「涅槃の果実」を手に入れる、なんていう冒険クエストだからつまらないはずがない。個人的に夢枕獏氏の文章は最も読みやすい人間なのでなおさらに。しかし出てくる化け物がどれも気持ち悪かったですね。絶対に行きたくないって思いました。あと、あえて戦闘描写をカットする技法は目から鱗でした。主役の初戦闘、シンと黒鬼のバトルなど。2025/09/24
azuno
3
自分蔵書の再読。実は双葉文庫版だが絶版なのか？(表紙イラストがいいんだけど）獏さんの初の長編という事らしい。文章、展開ともスピーディーで読みやすい。続巻も持っているので読み進めよう。2022/04/06
ノビコ
3
初の夢枕獏本。涅槃だの階級だの仏関係の込み入った事情はよくわからないけど、エログロがとにかく好み。得体の知れない魔物も好み、ニチャニチャグチャグチャ大好き、その昔興味本位で見たうろつき童子を思い出しました。アニメで映像化してほしい、もちろんその場合はR18ですわね。2018/11/09
-
- 和書
- 残影
