内容説明
神奈川県警の刑事・二村永爾は、殺人事件の重要参考人ビリー・ルウの失踪と関わった嫌疑で捜査一課から外されてしまう。事件直後、ビリーが操縦していたジェット機が台湾の玉山の上空で姿を消したことを知らされる。一方、横須賀署の先輩刑事から国際的な女流ヴァイオリニストの養母である平岡玲子の捜索を私的に頼まれる。玲子のマンションで二村は壁に拳銃弾を発見、彼女が事件に巻き込まれたことを知るが…。三島賞受賞第一作となる傑作ハードボイルド。
著者等紹介
矢作俊彦[ヤハギトシヒコ]
1950年、神奈川県横浜市生まれ。東京教育大学附属駒場高校卒。高校在学中からダディ・グースのペンネームで漫画家として活躍。72年、早川書房の「ミステリマガジン」6月号に、「抱きしめたい」を発表。21歳で小説家としてデビュー。78年には初の長編『マイク・ハマーへ伝言』を刊行し絶賛される。小説の他にも、大友克洋との合作コミック『気分はもう戦争』、日活アクションのアンソロジー・フィルム『アゲイン』、劇映画監督作『ギャンブラー』などが話題に。また、2003年に発表した長編『ららら科學の子』が第17回三島由紀夫賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
himehikage
15
長年東京に住んでいたのに横須賀には仕事でちょっと寄ったくらい。ドブ板通り、一度行って見ておけばよかったーと思わせる本書。時代と土地柄の雰囲気たっぷりながら、少し話が入り組みすぎていて、最後あたりは集中力持たずだらだら読んでしまった。だらだら読むのもありかも?2019/11/30
まんだよつお
11
本家がLONGなら、矢作版はWRONG。全編に散りばめられた気の利いたセリフや警句、人によっては鼻白むほどのキザな言い回し。錯綜する物語、張り巡らされた伏線、次々登場する胡散臭い男女、20年近く前の横浜と横須賀のディテール、そしてファム・ファタール、海鈴(アイリーン)!質量ともに二村シリーズの到達点。「私はひとり、そこに取り残された。彼らの姿を観たのは。それが最後だった。その日から先、私が親しくしていたものは残らずこの町からいなくなった」――そう、二村は誰に、何に「さよなら」を告げたのだろうか?2018/05/25
ネムル
11
チャンドラーの本歌取りは当然としても、ミッキー・スピレインや大藪春彦のくすぐりに笑った。ただし文章のノリはチャンドラー風でなく、もっとシンプルで力強い。9・11を目前としたアメリカへの、そして20世紀へのグッドバイを描く野心作だが、物語の骨格自体はもの凄く複雑で厄介なのには肩が凝った。これを素直に楽しむには、ハードボイルドに酔うだけでなく、事件の様相をしっかり捕まえて読む必要がある。2014/12/15
ユウスケ
8
チャンドラーの同名の作品を換骨奪胎して書かれた作品。ただ舞台は西暦2000年夏の横浜・横須賀であり、徹底してその夏の雰囲気を描写している。(横浜スタジアムで登板した巨人の中継ぎ投手が「泣きそうな顔」と言うところまで![この投手は実在です])あたかも本当にあった出来事のようにまで描写を高めているし、横浜・横須賀が舞台である必然性も十分、1999年でも2001年でもなく、2000年にこだわって書かれたことにひとつの意義を感じる作品です。
Satoshi
8
和製ハードボイルドと言っていいのか分からないが、横浜・横須賀を舞台にし、チャンドラーの長いお別れをオマージュした作品。言葉回しがこれでもかというほどハードボイルドチックであり、読んでいるだけで楽しい。横浜県警刑事と日系人のパイロットの友情についてアルコールを軸に描いている。ベトナム戦争末期の脱出者などの社会問題を絡ませているが、本作は読んでいて漂う空気感を楽しむものであると思う。最後の一節は少しくすっとさせられた。2016/12/08