内容説明
終戦直後の東京・ドヤ街。誰もが今日を必死に生きていた時代。復員兵の西郷は、ふとしたことから孤児の未知夫とバーの踊り子朱里と疑似家族のように暮らしはじめた。貧しい中で、ささやかな幸せをかみしめる3人。その頃、街では人食い鬼の仕業と噂される猟奇的な連続殺人事件が起こっており、犯人として西郷が疑われてしまう。そんな彼を助けたのはダイドウジを名乗る人物だった―。大道寺と大導寺。死者たちの宴に彩られ、彼ら一族の忌まわしき過去が紐解かれていく。
著者等紹介
栗本薫[クリモトカオル]
東京生まれ。早大卒。江戸川乱歩賞、吉川英治文学新人賞受賞。中島梓の筆名で群像新人文学賞受賞。ミュージカルの脚本・演出等、各方面でも活躍中
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感想・レビュー
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雪紫
11
竜介のイメージが本当に同一人物かと疑いたくなるくらい、物語を進めて行くたびに色々変わる。今回は嫌な方で。終戦の暗さや主人公を犯人にしようという動きとあいまってかなり落ち込む読後感よ・・・。疑似家族物好きだから余計にそう思う。
kaizen@名古屋de朝活読書会
7
戦争の後の日本。 西郷将則 未知夫 朱里 大道寺雅臣 の4人が登場し、人間模様を編み出して行く。 連続殺人事件の裏に何があるのだろうか。 栗本薫は何を描きたかったのだろう。 人間の心理、人としての生き方、人間の限界。 一度読んだことがあり,手にも持っているが,単行本は表紙が違うので間違えて図書館で借りて来てしまいました。 内容は,暗いお話なので,暗いお話が嫌いな方は読まない方がよいでしょう。 文章は,栗本薫らしい,流れるような,すばらしさがあります。 2012/03/13
ako
6
戦争後の苦労、復員兵の苦しみが伝わってきた。犠牲にされた茜、朱里、未知夫、西郷。竜介は良い人なのか悪い人なのかシリーズの中でもコロコロ変わる。今回は悪い方。雅臣も犠牲者のようなものだと感じました。2012/10/08
kagetrasama-aoi(葵・橘)
3
六道ヶ辻シリーズの第五作目。終戦直後の東京が舞台です。大導寺竜介は登場するお話によって様々な表情があり、このお話の中で”多重人格”に関しての言及があり、そうだとしたら納得できるような気もします。大道寺雅臣、西御堂薫、復員兵西郷、等々登場人物が皆戦後の昏さを纏っていて、心が重くなりました。最後は探偵小説的謎解きというより、耽美なホラーって感じ!竜介は本当に大導寺家の呪いを成就させる人物なんでしょうか?続きがもう書かれないことが残念で堪りません。2017/04/08
シーラ
2
六道ヶ辻シリーズ。舞台は戦後。係累全てを失った復員兵と踊り子、そして子供が、擬似家族のように暮らし始めた時、破滅が始まった―――多くの死を経験してきたが故に彼らの抱える虚無。端整な顔立ちの少しぼんやりした華族の少年とそれを守ろうとする少年が登場し、彼等には因縁がまとわりつく。闇市に君臨するのは竜の兄貴こと大導寺竜介。パターンはパターンですが、戦争の生み出す闇が怖さを増強してます。お得意の退廃、耽美。ラストも予定調和。2015/01/10