内容説明
夫との別居を機に、幼いころから慣れ親しんだ実家へひとり移り住んだわたし。すでに他界している両親や猫との思い出を慈しみながら暮らしていたある日の夜、やわらかな温もりの気配を感じる。そしてわたしの前に現れたのは…(「懐かしい家」より)。生者と死者、現実と幻想の間で繰り広げられる世界を描く7つの短編に、表題の新作短編を加えた全8編を収録。妖しくも切なく美しい、珠玉の作品集・第1弾。
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。89年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)、96年『恋』で直木賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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absinthe
104
怪奇幻想短編集。日常生活の隙間に紛れ込んだ、この世とあの世を密かにつなぐ隠し扉の様な小説。恨みのこもった話もあれば、罪のない温かい想いが伝わってくる話もある。どの話も良かったが『ミミ』と『車影』が好き。『首』はどこかSFぽくて良い雰囲気。2024/10/07
藤月はな(灯れ松明の火)
39
「ミミ」はこの世の者ではない者への愛情と相対するあの世の匂いがあるからこその恐怖が相俟って悍ましくも切ない。「神かくし」は溜め込んで我慢するしかなかった女性の情念の恐ろしさと切なさを描いているので本当に遣る瀬無い。私だったら神隠しにあった人々は自業自得だと思ってせいせいするけれども、雪さんの場合は優しすぎるからずっと、苦しみ続けて怯えるしかないのが辛すぎるよ・・・。「蛇口」は人の生死の行方が分かる蛇口に付き纏われる男の人間らしい邪心もある心理描写に引き込まれました。一番、短い「くちづけ」の甘美性にうっとり2016/09/06
ぐうぐう
38
ホラー仕立ての作品を収録した短編集『懐かしい家』。怖がらせる、その手段が小池真理子の場合、異形や怪異現象ではない。いや、異形のものが登場する話もあるし、怪異現象が起こる話もあるにはあるが、それが見える、あるいは起こる理由として、小池真理子は人間が抱える不安や寂しさ、喪失感などを丹念に描くのだ。それでいて、恐怖演出も実に巧みなのだから、たまらない。(つづく)2017/07/14
ココ
34
夏になると読みたくなる小池真理子の美しいホラー。本作は、とりどりの8話が集められた。怖さ、奇妙さ、わびしさ、郷愁、驚異、哀慕・・味わいの違う8作品を楽しむことが出来る。長編で読みたい、余韻の残る作品もある。2019/07/02
たか
34
この小説はすごい。どのはなしもほんま良くできてて怖さとなんか切なさがある。めっちゃよかった。オススメの短編集。2019/03/05