内容説明
ギリシャ国立考古学博物館にある〈アルタミスの馬と乗り手〉。そのブロンズ像を見たときに、宇野満典は衝撃を受けた。馬に乗った少年の顔が、死なせた息子の顔にそっくりだったからである。満典は、その事件で警察から執拗な取調べを受け、周囲の状況に押し出されるようにして日本を出た。ギリシャに渡り4年がたとうとしていたその日。聡明なギリシャ人女性エフィーと愛を紡ぐ生活を送る満典に、仕組まれた艱難が襲いかかり、壮大な生命の物語は始まった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
478
宮本作品は完読していたと思っていたが、未読作に出会えた。ギリシャかぁ。作家さんたちも雑誌の撮影なんかでもバブル真っ盛りでバンバン海外に行けた時代。当時、日本は海外では悪者であった。そんな事情と、お国の経済が傾いていたギリシャを対比させたのか。今ならまったく違う作品になっていたろう。さて主人公、かつて我が子を事故とはいえ、殺してしまったという過去を持つ。わたしにはもうそれだけで絶対に無理なのだが。主人公をひたすら慕う妻のエフィーが健気だ。主人公には日本に残した別れた妻もおり、下巻にはきな臭さしか感じない。2022/06/11
KAZOO
98
宮本さんの作品は数十年前にはかなり入れ込んで読んでいたものですが、最近は少し遠のいてしまっています。「流転の海」シリーズも途中で止まってしまっています。そこで未読のものや海外のものを少し読んでみようと思い手に取りました。この作品は、子供を誤って死なせてしまった主人公がギリシャで生活をしていてそこでの状況が描かれています。ミステリー的な味付けで、上巻では日本へ戻ろうとしています。2024/10/05
佐島楓
40
幼い息子を殺してしまった過去を持ち、今はギリシャで女と暮らしている男。その心は揺らぎ続けていた・・・。下巻へ。2015/09/13
背番号10@せばてん。
31
1993年8月12日読了。おじさんだって、たまにはこういう本を。(2022年6月12日入力)1993/08/12
香乃
15
宮本さんのヨーロッパを舞台とした小説。今回はギリシャ。『ドナウの旅人』では、ドナウ川に沿って、車や列車での旅が描かれたが、ギリシャではエーゲ海クルーズでの船旅。どちらの作品も、実際に取材旅行をしているため、リアルな情景描写が魅力的である。そして、『ドナウの旅人』では母娘の愛と再生の旅であったが、『海辺の扉』では自分の過失で息子を死なせてしまった主人公の再生の物語。ギリシャ人の妻エフィーと元妻の琴美。満典は、どちらの女性を選んだのかが気になります。2017/04/21