出版社内容情報
教師竜太に赤紙がきた。感動のラストへ。竜太は治安維持法の容疑で拘留。直後、招集された。45年、8月15日満州から朝鮮へと敗走中、民兵から銃口をつきつけらるーー。
三浦 綾子[ミウラ アヤコ]
著・文・その他
内容説明
昭和16年、北森竜太は治安維持法違反の容疑で、7カ月も勾留、釈放されたものの退職させられ、追い打ちをかけて召集される。苛酷な軍隊生活で身も心も衰退した20年8月15日、満州から朝鮮への敗走中に、民兵に銃口を突きつけられた―。純粋な心根の青年教師が戦争に翻弄されていく悲劇。かつて北森家で命を助けられた朝鮮人労働者金俊明の運命。軍旗はためく昭和を背景に戦争と人間の姿を描いた感動の名作。
著者等紹介
三浦綾子[ミウラアヤコ]
1922年、北海道旭川市生まれ。旭川市立高女卒。59年、三浦光世と結婚。64年、朝日新聞社の懸賞小説に『氷点』が入選、国民的ベストセラーとなる。人間の愛、原罪、祈りなどをテーマに、『塩狩峠』『海嶺』『銃口』『母』など多数の著書を遺した。99年、77歳で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あつひめ
92
時代に翻弄された人生。共に苦難を乗り越えた仲間でも、わかりあえるかどうかは人の行いによるものだとつくづく感じた。何を信じたらいいのか。国民を守る国家が目隠し運転で走っているような世の中。今の日本にも起こりうる恐怖。道新でも綴り方研究会で囚われた人のことが取り上げられた。言いたいことが言えず、知りたいことが聞けない世の中はどうなってしまうのだろう。私たちはあの頃と同じ、そんな危ない状態の中に放り出されているのかも知れない。国家を見張るのは国民の目かもしれない。大人の小説を読んだ気がする。2013/12/18
優希
87
連続する悲しみに胸が締め付けられました。拘留され、辞職へと追い込まれた竜太は、失意の中にいたことでしょう。一筋見えた希望も招集に寄って戦地へと赴くことで叶わないのが辛かったです。それでも苦難は続かないもので、幸いにも復員でき、念願の結婚に行き着くことができて本当に良かったです。時代に翻弄され、理不尽な世の中を悩み苦しみながら生き抜く竜太。苦難の末のハッピーエンドだからこそ感動しました。昭和の終わりが何気に哀愁を誘います。2015/10/17
も
60
思ったこと感じたことを自由に表現できることの素晴らしさ尊さを再認識しました。無実の罪をきせられ、釈放されてからもその不当な逮捕が竜太の足を引っ張る。本当に理不尽だし、腹も立ったけれど、救いだったのは竜太が行く先々で彼の心を奮い立たせる素晴らしい人との出会いがあったこと。素晴らしい作品でした。2017/01/16
おさむ
57
チャン・イーモウ監督の映画「生きる」を彷彿させるスケールの大きな小説でした。綴り方事件で無実の容疑を着せられる主人公。思想犯としての差別、結婚直前の召集、満州での過酷な戦争体験、そして、敗戦。理不尽とも言える時代の波に翻弄されながらも決して希望を失わず生きる。下巻を読むと、あの佐藤優さんが薦める理由がよくわかりました。2016/06/14
Taka
55
上巻を返しに行った図書館で運良く下巻の調達に成功し、まさに一気読み!思想犯の嫌疑から召集、出征、敗戦、帰国と怒涛の展開が。主人公の一挙手一投足が嗅覚にも伝わってくるような描写に戦争の悲劇が相まって何とも言えぬ読了感だな。2018/11/17