感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばりぼー
38
総重量2億トンの飛蝗群団は秋の訪れとともに死滅したが、春になって卵がかえると第2世代は140億トンに膨れあがり、東北6県はほぼ全滅。150万人を越える難民・漂流民があふれ、食糧を求めて南へ東京へと向かうが、都は難民受け入れを拒否して警察権力を用いて強制排除。野上青森県知事は、明治新政府に戦いを挑んだ戊辰戦争という過去を振り返り、ついに…。西村寿行氏の想像力の凄まじさに圧倒される怒濤の展開です。飛蝗群団も脇役に過ぎず、あくまでも主役は愚かで身勝手な人間達。荒唐無稽とは言い切れない迫真の人間ドラマでした。2014/06/21
金吾
24
期待値が高すぎたせいか、争乱の規模が大きくなりすぎて収集がつかなくなったような終わり方でした。しかし国家の美名の下に政治家が棄民政策をとるのはあり得ると思いました。2023/05/18
衛兵
21
中国大陸からバッタの群れが青森に飛来。東北地方一体は、瞬く間に食い尽くされてしまう。東北六県の人びとは飢え、妻や娘を売り、難民となって東京を目指す。青森県知事の野上は事態を打開すべく奔走するが、畦倉総理は備蓄米を東北から取り上げようとしていた…この本が出版されたのは昭和53年のこと。その後東北は大冷害や東日本大震災、今回のコロナ禍といくつもの危機に直面してきた。本作品のようなパニックや暴動が起きなかったのは、改めてすごいと感じる。2020/06/27
さっと
9
上巻から→被害者であって、大人になるにつれてもうポリポリ食ってる場合じゃなくなってきたところに、井上ひさしの『吉里吉里人』の解説か、榎本武揚の北海道共和国関連の本かで本書に言及する場面があって手に取ったしだい。まぁ、作者の書きたいところ蝗害はひとつのきっかけであって、日本崩壊かという一大スぺクタルにしてサスペンス、パンデミック、ハードボイルドなハリウッド級の超絶エンターテインメントなわけで、蝗害を契機にした政府の欺瞞、東北独立といった政治的な駆け引きはあれど、本領発揮は武闘シーンよねぇ。私はニガテだけどw2019/04/07
浅木原
8
2億トンの飛蝗の大群で東北が壊滅する話……と見せかけて、『滅びの笛』と違って実は飛蝗は脇役で、メインは東北が壊滅した場合に発生するパニックを巡る中央政府vs地方自治体の戦い。冷静に考えると人物描写も話の展開もかなり荒っぽいし、くどい描写も多いんだけど、昆虫パニックものだと思ってたらどんどん人間同士の争いにシフトして、最後にはあれよあれよという間に戦争ものになっていくドライブ感にあっという間に読まされてしまう。完成度は『滅びの笛』の方が上だと思うけど、勢いと面白さはこっちのが上かも。面白かった!2019/05/26