内容説明
北条に風魔あり、と四隣に恐られてから、かなり久しい。風間の地に在った小太郎義包が、役の行者の流れを汲む、身心陶冶の鍛錬から跋焼術を会得し、不眠、変身、飛翔、隠形等々、超人的な技を習得したのを風魔忍法のはじめとした。戦国乱離の時代、一介の武辺者伊勢新九郎が天下の北条早雲となるまでに風間小太和義包はその秘術を駆使して扶けた。四代目小太郎吉包が縦横の活躍で天下の耳目を奪ったのは天正六年秋、甲斐武田との一戦であった。この時小太郎十四歳、二百余名をひきつれ敵陣攪乱の采配をとった。「魔性にたぶらかされた」と喧伝され、風間が風魔の字をあてられるようになったのはこれからである。折から北条家は早雲以来五代にして、はじめて滅亡を懸けた土壇場に立たされていた。