内容説明
新聞社の調査部に勤める美しい才媛、後藤美代子が五年前のある夜失踪した。状況に不審な痕跡は何もない。ではどうして彼女は姿を消したのか?ノンフィクション・ライターの日比谷昭彦は彼女の失踪に関心を抱き、真相を探り始める。追うほどに、彼女の魅力は鮮やかな像を結びはじめ、日比谷はそのミステリアスな背景に引き込まれていく…。凛とした美しさと孤高な精神を描く長編小説。
著者等紹介
片岡義男[カタオカヨシオ]
1940年東京生まれ。74年に『白い波の荒野』で作家デビュー。75年、『スローなブギにしてくれ』で野性時代新人賞を受賞。かつてないスタイルで若者の心象風景を描き、七〇年代から八〇年代を通して時代の圧倒的支持を受ける。写真、エッセイ、評論の分野でも活躍
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほほほ
25
片岡義男さんのミステリー。5年前に突然失踪し、今も行方不明である美人OLについて調査していくという内容。自分というものの存在について、ゾワッとくることを感じさせられました。わたしの場合、鏡を見るときより、写真を見るときより、他人から見た自分について聞くときより、自分で自分の名前などを口に出している時に、誰だ?これ?と気が遠くなる時があります。都会派でおしゃれ。エスプレッソばかり飲む主人公。村上春樹をもっとシンプルにした感じで、村上春樹に時々くどさを感じるわたしには片岡さんの方がちょうどよくて好きかも。2014/09/27
SOHSA
17
《購入本》97年刊行。なるほど片岡義男の小説はこういうように変化し発展していったのかと読み手に思わせる作品だった。いわゆる角川文庫の赤表紙の頃の作品とは趣きを異にして、確固たるストーリー性の作品となっている。ミステリーや推理小説といった枠組をとりながら、一方では以前から片岡義男が描いていた登場人物相互の微妙で快適な距離感・空気感を保ったままの不思議な関係性といったものを失うことなく描き込んでいる。本作品は数ある片岡作品の中でも、あるベクトルが感じられる秀作であり、ある意味、集大成かもしれない。2024/06/24
タイコウチ
7
人物の内面に直接触れることを避け、行動と事物の関係を描くことで、女性の失踪事件の謎解きを語る。あまりに理想的な人物設定と特異な日本語表現を受けつけない人もいるだろうが、私には心地よく刺激的な読書体験だった。2009/08/18
ツキノ
5
単行本発売当時に読み、ぐんぐん惹きつけられたストーリー。ある意味ミステリ。勤務する図書館に文庫本があったので、引用しつつ再読。内容は覚えていたのだけれど、ラストが、わたしの中で完全に映像として違うものができあがっていたことに驚いた。それほど映像が浮かんでくるストーリーなのです。名作だと思う。2011/10/02
prophet-5
3
ミステリー的に捉えてしまうと伏線が回収出来ていなかったり、そもそもの部分で消化不良感はあるが、美代子を媒介してそれに関わるヒト達の関係性の流れが主軸と考えれば納得は出来る作品。イメージしやすい片岡義男の作品ではないが、やっぱり片岡義男の作品。2013/02/13