出版社内容情報
天下の奇人が語りはじめた、世にも珍妙な冒険譚。
おかっぱ頭の少女チイは、じつは男の子。大道芸人の両親に連れられて各地を踊ってまわるうちに、大人たちのインチキを見破り、炭田の利権をめぐる抗争でも大活躍。体制の支配に抵抗する民衆のエネルギーを熱く描く。
内容説明
おカッパ頭の少女のなりをした踊りの名手、大道芸人の美少年チイは、風俗壊乱踊りを踊ってワイセツ罪でつかまるが、超能力ぶりを発揮して当局者をケムにまく。つづいていかさま賭博を見破ったり、右翼玄洋社の壮士と炭坑労働者とのケンカを押さえるなど八面六臂の大活躍。大衆芸能を抑圧しようとする体制の支配に抵抗する民衆のエネルギーを、北九州を舞台に、緻密で躍動的な文体で描き出す、夢野文学傑作の一つ。
著者等紹介
夢野久作[ユメノキュウサク]
1889年福岡県に日本右翼の大物、杉山茂丸の長男として生まれる。幼名杉山直樹。夢野久作とは福岡の方言で「夢想家」の意。慶應義塾大学文学部中退。禅僧、農園主、能の教授、新聞記者と、種々の経歴をもち、1926年「あやかしの鼓」を雑誌発表して作家生活に入る。「いなか、の、じけん」等、因縁と心理遺伝を題材として作品を著し、構想10年の果てに完成した代表作『ドグラ・マグラ』は国内外の日本文学者から比類ない評価を受けている。36年春、47歳の生涯を終えた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナマアタタカイカタタタキキ
77
これは痛快!どうやら未完のようで、そこだけは悔やまれるが、それでも充分に面白い。裏表紙にある紹介文の情報量が多くて、どんな話か見当が付かないまま読み始めたけれど、解説にもある通り、夢Qにもかかわらず推理小説でも怪奇小説でもないとは驚き。そして純文学でもない。けれど冒頭から惹き込まれる博士の独白シーン、“幻術的”とでも形容したくなるこの独自性、ここだけ抜き出しても誰の作品か一目瞭然なあたりは流石である。昭和金融恐慌から始まるような暗い時代に書かれながら、天真爛漫なチイの愛らしさに、笑いなしには読めなかった。2021/07/13
鱒子
71
犬神博士と呼ばれる変人が、自己の幼少期を振り返る作品。ええっここで終わるの?という尻切れとんぼな感じです。福岡県の古い町並みが描写されており、地元民として面白いです(それでも古い方言は読みにくかった)。「ドグラマグラ」という言葉が数回出てきているのが、興味深いです。2019/10/18
優希
47
面白かったです。未完の作品のようですが、それでも十分物語を堪能できました。夢野久作の持ち味である作風ではないのが気になりましたが、読んでいくうちに世界に没頭してしまいました。2022/03/04
そら
40
文豪作品は難解で読みにくいと思ってますが、これはとっても読みやすかったです。そして意外と面白い、魅力的♡っていうか私好み( *´艸`)。この独特のセリフの言い方は最初、ギョッとしましたが、これはこれで味があって小気味いいです。(感嘆詞や笑い声がやたら多くて、そこがカタカナという。。ヒエー、とか、イヒヒヒヒ、とか)明治時代。主人公は7、8歳の美少年。女の子の格好をさせられ、両親(らしき?)と3人で大道芸人として放浪している。からの〰、ドタバタ、ワチャワチャ、活劇風に展開していきます。2019/09/23
きょちょ
34
題名は「犬神博士」、作者は「夢野久作」となれば、妖しいorおどろおどろしいor幻想的or眩惑的な作品と思ってしまう。 しかし、内容は全く予想と反した。 6歳前後の少年の活躍の物語。 彼はある意味神がかりで、大人を唸らせる発言・行動をとる。 時代背景は昭和初期で、戦争が懸念される中、筑豊炭田の利権争いという話。 夢野久作の当時の考え方が作品に反映されている。 頭山満をモデルにした人物が、なかなかかっこよい。 ★★★2018/10/23