出版社内容情報
これぞ山風版『里見八犬伝』! 忍法帖シリーズ上に燦然と輝く屈指の傑作。八犬士の活躍150年後の世界。里見家に代々伝わる八顆の珠がすり替えられた! 珠を追う八犬士の子孫たちに立ちはだかるは服部半蔵指揮下の伊賀女忍者。果たして彼らは珠を取り戻し、村雨姫を守れるのか!?
山田 風太郎[ヤマダ フウタロウ]
著・文・その他
内容説明
安房里見家に代々伝わる家宝がスリかえられた!“忠孝悌仁義礼智信”の伏姫の珠に代わって残されたのは“淫戯乱盗狂惑悦弄”の偽珠。里見家取り潰しを目論む本多佐渡守の策謀であった。珠奪還に健気に奔走する村雨姫のため、甲賀卍谷で修行を積んだ八犬士の末裔たちは奮起する。だが、服部半蔵麾下の妖婉なるくノ一衆8人が立ちはだかり…。その忍法、凄艶絢爛。その筋立て、壮烈無二。反・道徳的にして忍法帖史上屈指の大傑作。
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922年兵庫県生まれ。東京医科大卒。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞を受賞。その後、58年『甲賀忍法帖』を発表し忍法ブームに火を付けた。また、『警視庁草紙』『幻燈辻馬車』等で、開化小説にも新領域を開いた。2001年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
288
既読の忍法帖の中で、もっとも刺さった。原典を揶揄したような、里見家のその後の様子だけでも面白いのに、後継となる息子たちの白けっぷりが、さらに笑える。それをいかにして死闘のただ中に飛び込ませるのか、興味津々で読んでいたら、なんと可憐な姫様のため、だけで押し通す力業。この力業が潔い。どら息子たちなので、当然、忍術を極めているはずもなく、奇抜な忍法合戦の趣は薄いが、軽薄な男たちが、姫様のための一念で、躊躇いなく命を捨てる姿は、やはりぐっとくる。多分に戯画的な都合の良さや、軽さも含めて、上手くまとまっている。2022/08/17
優希
55
抜群のエンターテイメント性ですね。八犬士VS伊賀くの一8人の対立が読み応えあります。安房里見家に伝わる珠が偽珠に掏り替えられます。里見家取り潰しを目論む策謀に対し、珠奪還に奔走する村雨姫のため、八犬士たちが立ち上がり、巻き起こる闘いに手に汗握らずにはいられません。禍々しさや猥雑さも、最後の美しさが全てを消してしまうのが山田風太郎ならではですね。凄艶絢爛で反道徳的ながら面白い忍法帖でした。2014/12/07
タツ フカガワ
52
再読。慶長18年、徳川幕府老中の本多佐渡守は安房・里見家の取り潰しを画策。伊賀忍者服部半蔵に命じて、里見家に代々伝わる伏し姫の珠八つを盗ませる。里見家は甲賀で忍術修行中のはずの八犬士に珠の奪還を命じるが、意外や八犬士たちのやる気は薄い。伊賀くノ一VS八犬士という忍法帖シリーズ王道のバトル・ゲームの構成で、突如地面が垂直に、地面に垂直の壁が水平になる、まるで映画『インセプション』の一場面のような忍法「地屏風」など、相変わらず山風先生の発想が楽しい。エロとグロにユーモアが加わった読後感は意外に爽やかでした。2024/02/27
キャプテン
44
★★★★★_「忍者ハッタリくんだってばよ!フェア」第六弾。機械仕掛けの現代の闇から闇へと飛びまわる忍者、になりたいだけのニート忍者、ハッタリくんだってばよ!今回は、甲賀忍法を学んだ、かの有名な里見八犬士の後継者たちに、忍者の極意を学ぶってばよ!あの八徳の八犬士たちの息子たちが、グレているだけでなんか格好いいのに、ひとりの姫様のために命をかけていく様が超震えるってばよ!はまったってばよ!ハッタリだけじゃなくて、ちょっとだけちゃんと努力しようかと思ったけど、彼らの真似をするなら、グレるところから入るってばよ!2019/06/17
にし
43
京極先生の解説が全てを語っています。『斯様に山田風太郎は文章が巧い。』滝沢馬琴の八犬伝を屈辱しかねない この物語の禍々しさや猥雑な滑稽さも全て最後の動かぬ破れ傘や村雨の美しさで下品で卑しい者に品位を与えてしまいます。『映像に打ち勝てるだけの言葉の豊穣』これが山田風太郎の文章なんだな。2014/06/23