内容説明
時は寛永9年。三代家光の治世である。大老土井大炊頭の近習・椎ノ葉刀馬は、御公儀忍び組に関する秘命を受ける。伊賀・甲賀・根来の代表選手を査察し、最も優れた組を選抜せよというのだ。妖艶奇怪この上ない忍法に圧倒されながらも、任務を果たす刀馬。全ては滞りなく決まったかに見えたが…それは駿河大納言をも巻き込んだ壮絶な隠密合戦の幕開けだった。卍と咲く忍びの徒花。その陰で描かれていた戦慄の絵図とは…。公儀という権力組織を鮮烈に描いた名作。
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922年兵庫県生まれ。東京医科大卒。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞を受賞。その後、58年『甲賀忍法帖』を発表し忍法ブームに火を付けた。また、『警視庁草紙』『幻燈辻馬車』等で、開化小説にも新領域を開いた。2001年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
58
主要な忍者は3人と少ない分、濃い忍法帖という感じがします。何度も闘うのでお互いの手の内を知っている緊張感がはりめぐらされていますね。妖艶奇怪この上ない忍法に圧倒されます。それぞれの思惑を胸に躍動するのが迫力を感じました。伊賀、甲賀、根来の忍法は淫猥で奇天烈ですが、特徴の異なる忍法が掛け合わされることで、物語に変化が生まれ、絶妙さも増しているように思います。闘いとエロティシズムがいい塩梅です。忍法と知略の闘い、忍法帖らしいやるせなさに惹かれました。2014/12/11
夜長月🌙@読書会10周年
45
忍術の名を借りた新しい官能小説かと思えるほどのSexのオンパレード。伊賀の忍法任意車、甲賀の白朽葉、根来組の濡れ桜といずれ劣らぬ奇想天外な忍術であり美女を次々と悶えさせては操ります。しかし、その手の単なる娯楽小説かと思いきや一転して天上から人々を動かす神のごとき展開はさすがに山田風太郎氏です。2017/08/12
カノコ
28
甲賀、伊賀、根来の忍びの三派のうち、最も優れた一派は何か?何というか、口にするのも憚られるようなエログロ忍法の応酬で、女性なら顔が引き攣ること請け合い。詳しく語ることは差し控えるが、本当にお下劣で「一体何の役に立つの?」という忍法ばかり。しかし、山田風太郎の手にかかれば、まさかのクールな頭脳戦として語られるのです。登場する忍びが三人のみ、術も限られているという極限までのシンプルさが、物語の謀の上手さを際立てている。全ての戦いが終焉した後は、思わず唾を飲む程の美しい残酷な幕切れ。まさに、忍法は、忍の一字。2017/08/06
有理数
26
超傑作。「舌で舐めた部分を性感帯化させる忍術」VS「性行為をした相手の精神に乗り移る忍術」VS「性行為後に相手の女を殺し、その血液を刀で飛ばして血液に触れた者の肉を溶かす忍術」という下品忍術バトルから始まり、正直序盤は笑い転げて読んでいたが、徐々に忍者としての矜持と思惑が濃密に絡まり合う巧妙な展開となり、白熱の決闘、頭脳戦が咲き乱れる至高のエンターテイメントとして熱を帯びエスカレートしていく。ずるいよ……何者だよ山田風太郎……あらゆる戦いを越えた向こう側の景色に感動で打ち震えました。素晴らしい忍者小説。2016/10/26
けやき
24
【再読】やはり山風クオリティに間違いなし。 「ああ。――まことに忍法は忍の一字」2015/09/23