内容説明
ひくく声をかけて、いきなり女に飛びかかった小平次は、恐ろしい力で首をしめあげ、すばやく短刀で心の臓を一突きに刺し通した。その時、恐怖に引きつった青白い顔でじっとみつめる少女と顔を合わせてしまった。「見られた…。生かしてはおけない」男は江戸の暗黒街でならす名うての殺し屋で、今度の仕事は茶問屋の旦那の妾殺しだったのだ…。色と欲につかれた江戸の闇に生きる男女の哀しい運命のあやを描いた傑作集。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
1923年東京浅草生まれ。下谷西町小学校卒業後、株式仲買店に勤め、海軍入隊。戦後、都職員から長谷川伸門下生となり新国劇の脚本と小説を発表。60年「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の三シリーズで時代小説の第一人者となる。吉川英治文学賞受賞。90年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kira
19
電子書籍。未読だった短編が多かったので買って読んだが、殺伐とした雰囲気と後味の悪い読後感は当然のことか。非情な世界の話を読むのは、もういいかな。2024/10/19
出世八五郎
10
鬼平犯科帳11巻の巻末解説で紹介されていたので手に取った。題名に暗黒街とあるけれど、別のレビューを見れば、仕掛け人藤枝梅安連載開始前の作品とある。見た憶えのあるような藤枝梅安お馴染みの元締めの名前が毎回出てくる。故に暗黒街と題名が付くが、艶めかしくいい女が毎回出てくるポルノ短編集とは言えないが、そういう描写が多い。どの話も面白い。2023/07/15
みさと
3
カタギで表の世界を生きていけるならそれに越したことはないが人生どこに転落があるのか予想がつかない。結局こんな生き方しかできない。金で人を殺す稼業に生きているが、殺しの現場で顔を見られてしまい、生かしてはおけないと決意するが。人を殺して逃げ、仇討ちの恐怖に取り憑かれ、強盗を追手と勘違いした結果。かつて姉が無頼浪人に暴行されて殺されたことが人生を狂わせていく。殺しの依頼を受けたが相手の顔も知らない、久しぶりに会った昔の仲間にその話をしたら。色と欲につかれた江戸の闇に生きる男女の哀しい運命のアヤを描いた短編集。2023/03/30
酩酊斉案山子
2
短編集だけど多くの設定が仕掛人シリーズと共通、見方を変えれば善悪どっちでもある、運次第で善悪どっちにも転ぶという人間観もほぼ同じ。梅安というヒーローがいないぶん痛快感はなく、より悲哀を押し出してやや陰うつ。2018/07/20
ぺしみち
2
面白い2014/11/11