感想・レビュー
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さっと
10
はじめての寺山修司。いまも流通している角川文庫の旧版。冒頭から海賊キッド(宮古列島大神島)、UMAヒバゴン(広島西城町)…と続き、中公文庫版にあった日本呪術紀行の副題は伊達ではない。印象的なのは「浅草放浪記」の浄閑寺(投げ込み寺)で線香に火をつけるシーン。「知り合いに遊女でも?」と尋ねる通りすがりのおばさんに、「みんな知りあいだよ」と返す修司。身売り考ともいうべき「ぜひない親のため」に陥った彼女らの境遇に暖かなまなざしを展開してきた彼なりの弔い。と同時に彼もまた「ぜひない親のため」のひとりなのだった。2025/03/02