内容説明
源氏亡きあと、主人公は二人の美しい貴公子、薫と匂宮にひき継がれた。源氏の「息子」であるもの静かな薫。孫にあたる奔放な匂宮。彼らは、恋のアプローチも全く違うのだが、結果的に同じ女性を愛してしまう。二人の愛を受けた美少女浮舟は、悩み続けて宇治川に身を投げようとする―。華麗な王朝絵巻をイキイキと話し言葉で繙く「田辺源氏」の最終巻。「匂兵部卿」「紅梅」「竹河」「宇治十帖」を収録。
著者等紹介
田辺聖子[タナベセイコ]
1928年、大阪生まれ。樟蔭女専国文科卒。64年『感傷旅行』で芥川賞、87年『花衣ぬぐやまつわる…』で女流文学賞、93年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞、94年菊池寛賞、98年『道頓堀の雨に別れて以来なり』で泉鏡花文学賞を受賞する。2000年文化功労者に。08年に文化勲章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
79
源氏亡き後、宇治十帖の世界が描かれています。薫と匂宮は正反対ながら同じ女性を愛する。だからこそ浮舟はその愛に悩まされるのだと思います。1人の女性を2人の男性が愛するのもまた華麗な王朝絵巻の一部として美しい。解説的な作品でしたが、源氏物語の世界が明るく光を当てられたように思いました。2018/07/31
フェリシティ
10
大和和紀の「あさきゆめみし」を読んで千年も昔にこんな壮大な物語が日本で作られたなんて!と感動し、母の影響もあって手に取りました。心にすっと入ってくるような優しい日本語で丁寧に語られる源氏物語は、とても読みやすいし親しみが持てます。ただ物語に沿って説明するだけでなく、ちょっとした平安時代の知識なども仕込んでくださるという優れもの(笑)「現代語訳からいきなり入るのはなぁ…」という方に最適の入門書だと思います。2013/02/21
kotono
6
とても分かりやすく、楽しんで読めました。『源氏物語』、全部通して読んでみようと思います。2014/03/06
Shoko Ochi
1
中から止まらず、下巻突入。宇治十帖をメインとした巻でしたが、心の葛藤が細やかに描かれていて、上、中よりも面白かったです。薫の君が不憫で、浮舟が愛らしくて、匂宮が魅力的。まだ続きが読みたいと思ってしまいました。当時の宮中の人たちも同じような思いを持ったのでしょうか。原作にもう少しだけ近い物を再読したいと思います。紫式部はもちろんですが、田辺聖子さんにも脱帽。こんな素敵なお話をありがとうございます。2014/11/23
青
1
最初から、何となく知識があって語り口が上手な人がわかりやすく源氏物語を語り聴かせてくれているような印象を持っていたのだけど、あとがきに源氏物語を語り聞かせる文化講座の文章化と書いてあって納得! 源氏が死んですぐ宇治八帖だと思い込んでいたけど、実は途中にも巻があったことを初めて知った。上巻では「ちい姫」だった明石中宮がしっかりした頼りがいある女性になっていたり、薫と匂宮と宇治の姫君たちだけの宇治八帖ではないことがわかって新鮮だった。2010/12/23