出版社内容情報
雪の阿寒で自殺を遂げた天才少女画家…時任純子。妖精のような十七歳のヒロインが、作者の分身である若い作家、画家、記者、カメラマン、純子の姉蘭子と演じる六面体の愛と死のドラマ。
渡辺 淳一[ワタナベ ジュンイチ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
83
はじめて読んだのは10年くらい前になるだろうか。真っ白い雪に赤いコート。忘れることができなかった。そして、この小悪魔のような彼女が忘れられなかった。一人の女性とは思えない多面的で、純子を愛した男はみな自分が思われ人だと語る。純子は男たちの目を通しながら自分を愛してる。17歳と言う大人でも子供でもない…魅惑の生き物。どの男との関係よりも姉との繋がりが私には羽布団の柔らかな逃げ場のように感じられた。雪が降る季節を迎える度に雪に覆われた阿寒湖を想像する。赤いコートの後ろ姿を思い浮かべる。2014/04/18
momogaga
44
読メ開始以前の既読本。渡辺淳一作品に嵌まったきっかけ。恋愛ミステリーとして読んでいた。
hit4papa
35
阿寒で自殺を遂げた18歳の女性画家。二十年の時を経て、彼女に想いを寄せていた主人公は、彼女と関係のあった男性たちを訪ね、死の真相を探し出そうとします。札幌を舞台にして、5人の男性、そして姉の回想を通して、人物像が明らかになっていくストーリー展開です。自分を一番に愛していると男性たちに思わせる女性の生き様、そして彼女に翻弄され喪失感を抱え続ける男性が活写されています。ただ、男性たちを魅了し、あっけなく果てた女性の心の底は分かりません。そこは読者の考えにゆだねるということになるでしょうか。2017/04/10
Miyoshi Hirotaka
29
札幌の高校が共学へと再編成された1950年代初めが舞台。奔放な恋に生き、冬の阿寒で自死した天才少女画家(加清純子)を同級生(渡辺淳一)、既婚画家、姉とその恋人、医師、共産党の活動家の6つの視点で描く。十代の若者の奔放な恋や既存の価値観への挑戦では、『肉体の悪魔』や『悲しみよこんにちは』に共通。二十年の時を経たことで野放図さを昇華させている。私の昔の生活圏が作中に頻出。主人公らが通う札幌南高は、当時も今も北海道の進学トップ校。登場人物らと同年齢で読んだ時には、勉強も男女交際もレベルが違うと完敗を感じていた。2024/12/26
みんく
27
数年ぶりの渡辺淳一作品。久坂部さんのエッセイに本書のことが書いてあったので。作家自身の人生を変えたファムファタル、自分を含めた6人の思い出話で純子像が六面体で描かれる。その中で純子の姉、蘭子がやはり最も純子を理解していたようだ。1971年頃に書かれたそうなのでやはり時代の違いは感じるが、多くの男性を虜にしつつ本当に愛しているのは自分自身、生前もその後も上手くセルフプロデュースした女性。今の時代にもありそう。2018/03/18