内容説明
笹沢左保は33歳。B新聞社の有望な若手政治部記者として将来を嘱望されていた。ゆくゆくは政治家か評論家へ、と野心を抱いていたし、また着々とその準備もしていた。春には保守党の有力代議士の末娘との縁談もまとまることになっていた。思惑通りに運んでいた彼の野心が、突然潰えたのである。それは、夕方、渋谷駅前の雑踏の中で「笹沢さん」と声をかけられたことから始まった。これが余計なものを一切かなぐり捨てて、情事に没入する、あの女との出会いであった。
目次
招かざる沈黙
華やかな欲望
奇妙な贈り物
言葉なき告白
冬の避暑地へ来た男
死を流す青い河