感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aquamarine
92
金田一氏が有名すぎて霞んでしまったようですが、表題作は由利先生のシリーズ一作目。物語のつくりが綺麗でドキドキしました。その時代ならではの移動方法も新鮮で楽しめました。たくさんミステリを読んでいるともちろん気になる部分は出てくるのですが、それでも気になっただけで解くところまではとても無理で、最後まで読んでため息が出ました。同時収録の「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」はミステリとして読むと期待外れかもしれませんが、男女の愛憎とおどろおどろしさを堪能しました。好みはあると思いますが私はこの世界観がとても好きです。2017/08/02
geshi
45
『蝶々殺人事件』読者をフェアに騙そうという作者の意気込みが感じ取れる良質な探偵小説。怪奇要素のない都会的な乾いた横溝作品。探偵役の由利先生のキャラは金田一に比べるとパッとしないのは仕方なし。フロフツのオマージュと見せかけて実はクリスティーっぽいテクニック。舞台の切り替わりや最有力容疑者の移り変わりでひと時も休まらないストーリーテリングに乗せられ、シンプルなミスリードに気づかせない。砂の使い方が実に上手いなぁ。『蜘蛛と百合』『薔薇と鬱金香』探偵小説ではなくて横溝の大時代的スリラー風味。2017/11/06
のびすけ
35
ソプラノ歌手・原さくらの死体がコントラバス・ケースに入れられて発見される事件が起こる。さくら殺害のために行われた様々な偽装工作。探偵・由利麟太郎がそれらを鮮やかに解き明かす。推理小説としての謎解き要素が盛り沢山で読み応え十分なのだが、その割には犯人の動機、必然性がぼんやりしているのがやや不満。東京~大阪間の汽車移動に10時間かかってる所に物語の時代を感じる。表題作の他、短編2編収録。2021/03/04
林 一歩
32
由利・三津木コンビでは珍しい本格推理小説。これは傑作です。「本陣殺人事件」と並行して書かれた事実に改めて驚愕。金田一耕助というキャラクターが人気を博し、戦後殆ど登場しなくなった由利・三津木コンビですが、「地方」は金田一、「帝都」は由利・三津木といった書き分けをしていたら面白かったかもと思う次第。2013/05/08
Yu。
28
歌劇団のプリマドンナが公演直前に遺体となって発見される。それも意外なモノの中から。。。読めない譜面、過去の事件、そして彼女を取り巻く不穏な人間模様という推理ものを愉しむ上での材料や活かし方が十二分に発揮されるクオリティの高さは言うまでもなく本作はそれに留まらない終盤までの被害者のイメージをひっくり返す“まさに彼女”な人間ドラマにも注目すべき秀作「蝶々殺人事件」。怪奇だね‥ 近寄る者皆あの世行き‥「蜘蛛と百合」。緊迫あっての開放感がたまらなく最高「薔薇と鬱金香」。の三話から成る大満足の由利先生&三津木劇場。2016/11/15
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