内容説明
再会した夫イワーノフは、収容所で腕を失い、ロシア革命に心を奪われていた。過酷な日々に翻弄されながらも染乃は貧しさに耐え、大陸を流離い、パリへと渡った。こみ上げる望郷の念、混迷する革命運動。再び出逢いの地・金沢に戻った二人だったが、ここにも戦争と国家の罠が。染乃は夫を守り抜くため、誇りを持って生き抜くため、命を賭した取引に挑んだ―。一つの時代を駆け抜けた、強靱な愛。一人の女の流転する運命を、壮大なスケールで描く。
著者等紹介
五木寛之[イツキヒロユキ]
1932年福岡県生まれ。『蒼ざめた馬を見よ』で第56回直木賞、『青春の門 筑豊篇』ほかで第10回吉川英治文学賞を受賞。81年より一時休筆して京都の龍谷大学に聴講生として通学。ニューヨークで刊行された英文版『TARIKI』が2001年度ブック・オブ・ザ・イヤー(スピリチュアル部門)に。同年、菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たまうさ
3
朱鷺の墓イコール染乃やイワーノフのような美しく優しい人々の存在を許さなかった戦前の日本ーーーということなのでしょうが、作者は元々左翼だからなあ。私にはよっぽど昔の方がもののあはれがあったように思えるけど。2014/03/18
Nick Carraway
2
今、静かな感動と、虚しい気持ちにとらわれている。なんと美しい物語であったことか。なんと残酷で無慈悲な物語であったことか。人間が生きていくことの哀しさや喜びは、この物語のようなものなのかもしれない。染乃とイワーノフに安住の地はなかった。流浪の中でたどり着いた染乃の故郷金沢が、イワーノフとの別れの地となったのは遺憾だ。染乃は強すぎて、時にはなぜイワーノフと不安を共有せず、一人で背負うのか、とも思う。五木寛之の描く金沢は、美しい土地ではない。怨みと血と涙の染み込む厭うべき地だ。それもまた真実の金沢なのであろう。2024/11/10
Galilei
2
発表されて間もなく読みました。独自の露文の香りに新風を感じ、見たことのない北陸の古都・金沢に憧れました。
midokame
2
★★★★★
TB
2
★★★★上下巻読了。 30年も前の高校時代に1度、大学生で2度読んだ大好きな作品で、ずっと好きな小説ベスト3に入っていた作品。 だったが・・・・ やっぱり感性も歳とともに変わるし、世の中の嫌なものもこの歳なりに見てきたせいか、素直に感動しなかった。 「そんな都合よく、危機を救う善人は現れないよ~~」と冷めて読んでしまった。 でも世界中を舞台に壮大なスケールで描かれる五木ワールドは面白い。ぐんぐん引き込まれる。 2013/10/26