内容説明
「悲しいではないか」かつて明治の青年たちは、顔を合わせるとこう挨拶したという。「悲しいではないか」、悲しみを知っている人間だけが、本当の喜びを知ることができる。「歓ぶ」「悲む」「笑う」「飾る」「占う」「買う」「歌う」「想う」―。日々の感情の起伏の中にこそ生きる真実がひそんでいます。常に時代を予感し、人の「心と体」について深く洞察する、日本を代表する作家からあなたへ、元気と勇気が出るメッセージ。
目次
1章 歓ぶ(よろこぶ)
2章 惑う(まどう)
3章 悲む(かなしむ)
4章 買う(かう)
5章 喋る(しゃべる)
6章 飾る(かざる)
7章 知る(しる)
8章 占う(うらなう)
9章 働く(はたらく)
10章 歌う(うたう)
11章 笑う(わらう)
12章 想う(おもう)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
148
本当は、文明が進むにつれて仕事を早く切り上げて、本を読んだり、花を育てたり、絵を見たり、ものを書いたりしながら、人生の収穫期を味わうべきなのです。…なぜ現代人は暗さを恐れ、悲しみを嫌い、涙を避け、皆が明るく愉快であることを求めるのでしょうか。悲しさから逃げてはいけない。戸惑った人しか気づかないことがある。…見てから知るべきである。知ったのちに見ようとしない方がいい。そしてまた見て、そして知る。その繰り返しが大事。…本当の喜びを知る人は、深い悲しみも知っている。それは、闇が訪れないと咲かない朝顔のようです。2021/07/17
i-miya
54
2014.02.05(01/18)(つづき)五木寛之著。 02/03 (P009) ◎歓ぶ。 悪女に魅せられる男性。 ひとつ、チャーミングな部分、あればいい。 すべてを消し去る、悪女の部分。 2014/02/05
i-miya
51
2013.11.19(2013.11.19)(再読)五木寛之著。2013.11.18 (著者メッセージ) 「神は細部に宿る」といいます。 生きていくための思想というよりも、「生きるヒント」。 親鸞という天才的な宗教思想家でさえ、自分のだめさ加減を徹底的に自覚することから、大きな生命の流れを確信するという道を経て、導かれました。 暮らしの中に、ほんのちょっとした悦びでした。 (解説=岡田幸四郎) 虚実というより、往還、つまり、両者の間を運動する、移動をする、「思いがけない真実をものにする」 2013/11/19
i-miya
50
2013.12.27(12/18)(つづき)五木寛之著。12/27 (p278) (解説=岡田幸四郎、つづき)(しゃべる) (1)数日前ロシアから帰国した。(2)そこでの体験をしゃべる。 (3)室町時代、蓮如の話に急転。 (4)蓮如としゃべるパート。 (5)イタリア人の聖人の話。(6)戦時中の思い出。(7)再びロシアへ。 あくまで「思いつくままに」というライヴ性を強調しつつリアリティの土台を固めていく。 2013/12/27
肉尊
38
「親ガチャ」概念が流行して久しいが、この世に生を受けることは、如何に残酷なことか。『リア王』の「人は泣きながら生まれてくる」が示す通り、好き好んでこの家にこの時代に生まれたのではない。悲しむ余裕もなく突き進んできたのはいいものの、どこかで歩みを止める時がくる。アラブの商人が「買い急いではいけない」と忠告したように、我々は生き急いでいたのかもしれない。アサガオは四六時中、光を浴びても花を咲かすことはない。必要なのは闇。悲しみにうちひしがれた時こそ新たなる冒険の始まりとなる。2022/11/16