内容説明
教授になった島地章吾は、妻と愛人がいるにも関わらず、学生時代からの友人佐野が単身赴任中、妻明子と強引に関係を結ぶ。そんなとき、教科書採用問題で揺れる高知に、進歩派の一流教授団の1人として、講演会に招かれた島地は、女連れで乗り込む。そこは、佐野夫婦が移り住み、愛人の景子が出張で向かう場所でもあった。教科書出版社の売り込み競争に踊る、醜悪な人間像が次第に浮き彫りになっていく。新装版。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年福岡県北九州市生まれ。給仕や印刷工を経て朝日新聞西部本社に入社。51年に「西郷札」で第25回直木賞候補、53年に「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞受賞。56年、朝日新聞を退社し、作家生活に入る。67年、吉川英治文学賞、70年、菊池寛賞、90年、朝日賞を受賞。社会派ミステリーを始め、歴史・時代小説、古代史・近現代史の論考まで執筆は多岐にわたる。作家生活約40年の間に、随筆や日記も含めて約980編の作品を発表し、編著も含め約750冊の著書を刊行した。92年8月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金吾
32
教科書販売の話は競争とはこんなものなのだろうなと興味深く読めました。しかしながらラストはもっと激しくしてほしかったです。2022/11/11
うーちゃん
18
変な言い方だけど、悪人って 簡単にはへこたれないのね。浴室のカビみたい(笑) この作品の主人公・島地は、本当にカビみたいな男。ライバルの妻を愛人にしたり、親友の妻にもねちっこくつきまとって無理やり自分のものにするし、業界ではかなりの地位にいるから、常に威張り散らして 接待や不法献金も受けまくり。フィクションですから誇張はもちろんあるでしょうが、かなりのタブーであろう 教科書出版における内紛を ここまで書くのには、相当な取材を重ねたことと思います。※殺人は起きません、ミステリ色は弱い作品です。2012/10/05
T. Mu
15
松本清張さん、初めての作品でした。推理小説ではなかった(笑)社会派の作品でした。ダム建設や教科書販売に関する話題と男女のもつれを平行して書いていますが、時代が昭和30年代で少し古かったなぁ(笑)でも、面白かったですね。 しかし、主人公の島地教授はダメ男すぎる…4.02025/02/09
jima
11
昭和30年代の教科書採択。教授になった島地の悪どさ。2023/07/23
しんすけ
9
ラストで主人公は捨てた女からの血の復讐を受ける。だが主人公の社会的立場はそれで揺らぎそうもない。偽善的な地位ある者には醜聞をも名誉になることさえある。清張はそこまで書いてはいないが、本書の終幕は十分にそれを予測させる。教育の現場を振り返ると未だに地位を利用した汚職は絶えることはない。それは、日本の教育制度そのものが貧しいからだ。下記に、清張の怒り(憤慨)のようなものを感じる。/教科書会社が学校側に贈るリベートの理由に貧困児童の教材無償配布費が含まれている。これがリベート正当化の最大の理由の一つである。2017/09/19