内容説明
戦後の窮乏生活が遠のき、古来の慎ましさと新しい欲望が錯綜する昭和30年代―。高度成長直前の時代の熱は、地道な庶民の気持ちをも変えていく。浮気・出世欲・カルト宗教・金儲けにはまり、やがて三面記事の紙面を賑わす殺人事件へ。武蔵野の自然や駅前の街並みなど旧き良きニッポンの風景の中で堕ちていく男女をテーマにした短編を厳選。オウム事件を予言するような怪ミステリーを含む5編を収録する。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年福岡県に生まれる。53年、『或る「小倉日記」伝』で、芥川賞を受賞。56年、朝日新聞社広告部を退社し、作家生活に入る。67年、吉川英治文学賞、70年、菊池寛賞、90年、朝日賞を受賞。92年8月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
85
結局、今も昔も輩共のやることは変わりませんねwww。一方で、そんなことにも思いもよらぬことが待ち構えているといことが今尚読者を楽しませるというのは、著者の筆力というしかないように思いました。2024/04/14
ヒデキ
43
新聞に三面に載っていた刑事事件 その背景を描く短編集です 昭和の、まだ、私たちが、子どもの頃だと思う時代背景を感じさせてくれました。 2024/03/12
AICHAN
39
図書館本。松本清張の本はすべて読んだと思っていたが、調べてみるとこれは読んだ記憶がないので借りてみた。短編集だった。松本は推理小説であって文学になり得るものを求めていた。『球形の荒野』や『砂の器』などは立派な文学だと思うが、この短編集の短編には文学と感じられる要素が感じられない。すらすらと読んだ。『西郷札』『或る「小倉日記」伝』のような文学的なものを期待したけど、推理小説としてさえ新鮮味の感じられない短編ばかりだった。ただ「密宗律仙教」だけは面白かった。新興宗教とはおよそこんなものなのだろう。2018/07/04
そうたそ
36
★★☆☆☆ あっさりめな作品が五編。痴情のもつれみたいな、まさに三面記事に載ってそうな出来事を描いたものが収められている。昭和三十年代に書かれた作品を収めているということもあり、現代にはない独特の昭和の雰囲気も感じられる。男の女の情みたいなものの描き方にリアルがあるのは、やはり松本清張ならではだろう。一見何でもないような出来事をしっかり読ませる作品に仕上げてしまう。最後の作品はオウム事件を予見した~、みたいなことが作品紹介に書かれていたが、個人的には加持祈祷事件を思い出した。2017/11/24
ひなきち
33
新聞の片隅に載っている、小さな三面記事…。数行から輪郭を持ち始める犯罪事件簿。元新聞記者が書くサスペンスは、やはりすごかった。おおよそ現代では成立できない解決方法に驚いたが、犯罪を犯す人間の心情は…昔と今も…そう代わらないのかもしれない。「記念に」が個人的に印象深い。ここで止めておけば…のリミッターが外れる瞬間。理性でせき止めていた情が溢れ出す瞬間。その「瞬間」が…怖くて怖くて目をそらしたかったが、途中でやめることができないくらい引き込まれていた…。2018/07/25