内容説明
会社のOB会で拾う不満のタネ。退屈な隠居部屋でうごめく春機。必死で守り抜いた暮らしを全取っ替えしたい衝動―ある日を境に永年の職場を失った男たちが引き起こす生々しい事件と犯罪。諦めと寂しさ。執着と滑稽。彼らの孤独な姿を、懐かしい昭和日本の風景と共に見事に描き切った清張文学の真骨頂である。秀逸な短編を次々著した昭和30年代作品群の中から人生の晩節をテーマに選び抜いた、粒ぞろいの短編集。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年福岡県に生まれる。53年、『或る「小倉日記」伝』で、芥川賞を受賞。56年、朝日新聞社広告部を退社し、作家生活に入る。67年、吉川英治文学賞、70年、菊池寛賞、90年、朝日賞を受賞。代表作に『点と線』『日本の黒い霧』『昭和史発掘』など、幅広い分野で活躍する。92年8月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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北風
35
松本清張の書く主人公は、1:アグレッシブな男、2:薄幸の女性、3:くたびれたオッサン。…大半がこのいずれかだと思うのですが、この作品集は、3番目に絞りこんでます。くたびれたオッサン大集合です。個人的ベストは新潮文庫の短編集にも入ってる「空白の意匠」と「筆写」ですね。「空白の意匠」は主人公が気が弱すぎるとはいえ、サラリーマン社会がイヤになること請けあいです。「筆写」はいいですね。じいさんが最後に見せる意地にタメイキがでます。2015/03/25
雲國斎
24
昭和中期の匂い漂う、清張の短編集。テーマは男たちの人生の晩節だ。歳が歳だけに、感慨深い…。清張作品、読メでジャスト50冊!2018/06/23
金吾
21
時代感がありながらも、令和の今でも起こりうる話です。老いても達観しないのは人間の性なのかなとも思います。「いきものの殻」が良かったです。2025/05/13
キムチ
15
私個人としては、清張物ベストに入ると思う・・というのも歳を取ったからかな。月日は百代の過客にて行きかう人々もまた旅人なりの心境。何れの登場人物も折り返し点を過ぎた男ばかり7人。舞台は昭和30年、高度経済成長期。勝ち負け組をうんぬんする以前に、己自身と向き合い、ある意味不様なほどに生きていく葛藤をし続けた姿ばかりだ。「生き物の殻」は同期会の表れを裏面からえぐりうっそり。まぁ、こういう会には薄暗さを持つ人は出ないものだが。「背広姿の変死者」は清張がその場に居合わせて見ているようなどす黒い生臭さを感じさせる。
kthk arm
7
2022年108冊目。新聞社の広告部長の話はスリリングで面白かった。お爺ちゃんが女中にムラムラする話も哀しみもありつつ可笑しい。2022/10/11