内容説明
辣腕事業家山内定子が創った八王子郊外の結婚式場「観麗会館」は、その高級感がうけて大変な繁盛ぶりだ。経営をまかされている小心な婿養子善朗はある日、口論から激情して妻定子を殺し、死体を会館の名所である「岩壁」に埋め込んでしまう。門出を祝う式場が奇しくも墓場となり、その上空を不吉なカラスが飛び交い、新たな事件が発生する…。河越の古戦場に埋れた長年の怨念を重ねた、緻密な大型長編推理。黒シリーズの最新作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nozomi Masuko
22
辣腕事業家である女が造った郊外の結婚式場は、その高級感が受けて大変な繁盛ぶりであった。経営を任されている小心な婿養子はある日、口論の末に激情して妻を殺害、式場の名所である岩壁に埋め込んでしまうー。見ていてイライラするほど鈍臭い婿養子と、一方で共謀者と殺害を隠蔽するシーンは緊迫感があってメリハリあってよかった。キーパーソンの使い方が見事。やっぱり松本作品は好み。2016/07/10
浅香山三郎
12
松本清張が、中世(戦国期)の河越合戦や関東管領上杉氏の話を下敷きに、現代の結婚式場を舞台にしたサスペンスを書いていたとは。他の清張作品に比して、殺された女社長を山内家の末裔だとし、犯人らもまたその因果に絡むとするなど、かなり異色な作品ではないかと(少なくとも、純粋な社会派といふ感じとはテイストが違ふ)。2023/09/27
jima
11
八王子郊外の結婚式場「観麗会館」。せめて江戸時代くらいの対立なら良いのだが、室町までさかのぼると、現実感がない。2022/01/07
kamietel
7
★★★★☆馴染みのある土地が舞台だったので、ニヤニヤしながら評価2割増しくらいで読んでしまいました。ミステリーとしては、今でこそ目の肥えた人が多いので物足りなさもありますが、清張氏の作品は手口やトリックよりもその背景に趣向を凝らした作風という印象なので、今作も“らしい”と言えば“らしい”作品でしょうか。良くも悪くも芯の通った女性像の瑞々しい描写と、対照的に“何か”が欠落したような男性像というのも期待通りです。しかしまあ、事件が短絡的過ぎて全体的に陳腐な話になってしまった感は否めないでしょうか…。2018/07/02
てっしー
7
んん、何だかもう、突っ込みどころが多過ぎて…。とにかく行き当たりばったりの展開。犯罪心理描写も平面的で、本当にそれが巧みだと持て囃された著者の作品なのかと疑いたくなる。(それとも現代人が複雑に変わってしまったのか?)きっと物凄く多忙な時に書いたんだろう。中盤の無数のカラスが舞うシーンの禍々しさだけは秀逸。(このシーンだけが書きたくて一作書いたのではないか?と勘繰りたくなるくらい凄絶。)川越が舞台の作品を探していて見つけたのだが、川越は直接的な舞台ではない。象徴的にはかなり重要だけれども。2013/03/28