感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
96
戦国時代から江戸時代を舞台にした井上靖の歴史小説。有名な人物も出てくるが、無名な人々の生き方に筆が多く割かれており、一読忘れがたい印象を残す。「篝火」は合戦に初めて参加した若者の空虚な胸の内を書いている。戦争には様々な側面がある。英雄的な行動もあるが、多くの兵士はここに描かれているように戦いで気分が高揚した後は、空虚な気持ちになるのかもしれない。「森蘭丸」では、本能寺の変で命を落とす蘭丸の心が切ない。2018/04/14
メタボン
35
☆☆☆☆ 表題作は、意外に真田の本筋のことについて書かれておらず、名もない百姓侍や幸村の子幸綱、信之の妻月姫など、その周囲の者たちがクローズアップされており、これはこれで面白かった。長篠であっけなく倒れていった武田の武将達、織田方のその新しい戦い方に空虚さを感じる「篝火」。身分違いの美貌の姫に所詮届かぬ思いがその相手に槍を突き付けることになる「高嶺の花」。人質となった女に主君が手を付けたことに逆上し主君を槍で突く「犬坊狂乱」(高嶺の花とテーマが似ている)。光秀への確執と女への憧憬が交錯する「森蘭丸」。2021/03/28
金吾
25
○真田に関する4つの短編とその他の4つの短編です。どれも面白かったですが、特に「海野能登守自刃」「本多忠勝の娘」「篝火」「森蘭丸」が良かったです。2024/03/02
河内 タッキー
13
真田軍記とあるが、真田父子よりその周辺の人物の話だ。派手な合戦シーンがあるわけでなく、知略を巡らす話もない。しかしほとんど無名の登場人物達の生き方が心に染み入る。「風林火山」や「本覚坊遺文」もそうだったが、この雰囲気がなんとも味わい深い。どういう感じなのか表現できないのが残念だが、好きだ。2018/01/04
m
12
短編集。森蘭丸目当てで。どの話も短いのに物語に厚みがあるのがすごい。人間ドラマに溢れている。思いの外蘭丸が男らしく描かれていて意外だった。フィクションとはいえ、彼が小姓では満足せず戦に出たがっていたとは。真田三代と森蘭丸についてもっと詳しく知りたいな。やっぱり明智は嫌いだとつくづく思った(笑)2015/10/17