出版社内容情報
三島 由紀夫[ミシマ ユキオ]
著・文・その他
内容説明
諏訪湖で漁業を営む純朴な青年・田所修一は、下諏訪にできた近代的なカメラ工場と、そこで働く娘たちに憧れを抱いている。素人作家の大島十之助は、小説「愛の疾走」を執筆するために、そんな田所と工場で働く正木美代に恋愛させようと企むが、夫の小説道楽に反対している大島の妻が、策略を田所に打ち明けてしまう。仕掛けられた恋愛の行方は…。劇中劇の巧みさが光る、三島渾身のエンターテインメント小説。1963年初刊作品。
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925(大正14)年、東京生まれ。中学時代より習作をはじめ、16歳の時に『花ざかりの森』を発表。47(昭和22)年、東京大学法学部を卒業後、大蔵省に勤務。翌年退職し、本格的に作家活動に入る。49年、初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行し、作家としての地位を確立。主な著書に、56年『金閣寺』(読売文学賞)、65年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)などがある。『豊饒の海』四部作を完成させたあと、70年11月25日、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地にて自決。享年45(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
120
1962年に「婦人倶楽部」に連載。三島由紀夫は円熟期の37歳。この小説では客観体の叙述を軸としながら、所々に登場人物たちの1人称体の語りが配されており、その意味では幾分実験的な試みではあるのだが、残念ながらそれは必ずしも成功しているとも言い難い。諏訪湖畔で細々と漁業に従事する青年、修一を主人公に設定した点では『潮騒』に似ていなくもないが、彼の恋の相手はモダンなカメラ工場に勤める美代である。この二人の恋の行方が、アマチュア作家大島の作中作『愛の疾走』と並行して描かれてゆく。この点でも実験的ではあるのだが…。2012/11/06
青蓮
102
三島由紀夫のエンタメ小説。素人作家の大島が小説「愛の疾走」を執筆するために、漁業を営む青年・修一と近代的なカメラ工場で働く美代に恋愛をさせようと企む。仕掛けられた恋愛の行方は如何にーー本作もとても楽しく読みました。劇中劇というのがミソ。大島の奥さんが気風が良くてがカッコイイ。彼女が恋のキューピッド。三島はこういう女傑を書くのが上手いと思う。修一のような朴訥な青年って今はあんまりいないような。彼のうじうじ悩んでる姿は書かれた当時は「奥ゆかしい」という美徳だったんだろうな。三島文学に初めて触れる人にもオススメ2017/04/25
じいじ
88
舞台は風光明媚な諏訪湖畔、相変わらず三島の情景描写が美しい。純情な漁師の青年と湖畔のカメラ工場で働く美女との恋愛小説である。恋にうぶな二人、初キス同士の描写は初々しく眩しい。ちょっとコミカルで、ユーモアセンスにあふれた作品です。2020/02/10
優希
53
いやぁ面白いですね。素人作家の大島が小説のネタに恋愛をさせようとする構成が見事です。白羽の矢が当たったのが純朴な漁師の青年・田所とカメラ工場で働く美代。彼らに恋愛をさせるように企み、小説を書こうとするのが何とも言えませんよね。しかし夫の小説の趣味に反対する妻が全てを田所に打ち明けてしまうので、仕掛けられた恋がどうなるのかハラハラしてしまいます。するする読めるテンポの良さと密かに痛快な要素を盛り込んだ楽しい作品でした。2014/09/06
優希
49
再読です。素人作家が小説のために恋愛をさせようと企む構成が面白かったです。自分の小説のためなら策略を立てても良いということでしょうか。仕掛けられた恋愛の行方はどうなるのかを楽しむエンタメと言えますね。2023/11/28
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