出版社内容情報
科学を信じることは、人を信じることじゃないかな?
元科捜研トップの鑑定技術力と知識から「彼に鑑定できない証拠物はない」と称された土門誠。民間鑑定人となった土門のもとに、大学教授の猪狩愛が訪れる。彼女は土門の過去を知る数少ない友人のひとりだが、研究中に起きた大学内での火事で記憶を失ってしまう。そればかりか放火の疑いをかけられ……。旧友を信じたい思いと、科学的事実の間で揺れる土門が導き出した答えとは?
孤高の鑑定人が真実を暴くサイエンスミステリシリーズ最新作、ついにドラマ化!
【目次】
内容説明
元科捜研トップの鑑定技術力と知識から「彼に鑑定できない証拠物はない」と称された土門誠。民間鑑定人となった土門のもとに、大学教授の猪狩愛が訪れる。彼女は土門の過去を知る数少ない友人のひとりだが、研究中に起きた大学内での火事で記憶を失ってしまう。そればかりか放火の疑いをかけられ…。旧友を信じたい思いと、科学的事実の間で揺れる土門が導き出した答えとは?
著者等紹介
岩井圭也[イワイケイヤ]
1987年生まれ。大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
164
土門の学生時代の友人が絡む事件を集めた連作集は、前二作にはなかった人間臭さを垣間見させる。土門の鑑定で被疑者の嘘が次々に暴かれ自供に追い込まれる過程で、若き日の交友が彼の生き方を強く規定しているのが見えてくる。ぶっきらぼうで人付き合いの悪い男という過去作のイメージが、むしろ不器用だが熱い情熱を秘めた性格が浮かび上がるのを作者は楽しんで書いているようだ。サスペンスや引きを重視したテレビドラマ版とはかなり違うが、そこに流れるものは相通じるものがあると感じた。まあ藤木直人と白石麻衣のキャスティングはよかったが。2025/09/23
いつでも母さん
148
あの日々があったから今の土門が居るのねーそんな読後感が心地良い。シリーズの第3弾は連作の4話、追憶と銘打っているだけあって、土門の学生時代の同期3人との絡みがなんとも人間臭くて温かい。その存在が今も土門を支えているのだな。「科学を信じることは、人を信じることじゃないかな?」猪狩の言葉が土門を救うし、猪狩を救うことにもなるのが好い。3人も友人がいて、高倉と言う相棒もいる土門にまた会いたい(次はどんなハーブ水だろう?笑)2025/09/26
hiace9000
127
最後の鑑定人・土門シリーズ3作目。土門誠と同窓の友らとの大学時代の追憶エピソードを紐解きつつ、ますます冴える彼の執念の鑑定力を事件と人間ドラマを通して綴る四編。順を追うごとに、科学を拠り所として信じ感情を露わにしない土門のなかに確かに息づく温かな人間性の片鱗や、科学を信じるが故に人を信じるに至った、秘められたた原点が物語られていく。孤高の人であっても決して孤独ではなかった彼の人としてありようが、より鮮明に立体的に立ち上がる。作品ごとに七変化する岩井筆致は見事! 伊与原さんに比肩する理系ミステリー作である。2025/10/06
のぶ
93
シリーズ3作目の本作は土門の過去が追憶されるものだった。4篇の短編からなっているが、どれもが面白かった。日頃は不愛想な土門だが、過去には同期の仲間たちに助けられてきたことに人間味を感じられた。どの作品も良くできていて、科学は人を裏切らない、の通り理論的に解決される謎はすっきりしたものを感じられた。2025/09/17
チーママ
89
このシリーズの魅力は、冷徹に見える土門が科学の力を駆使して、事件の裏に隠されていた真実を明らかにしていくこと。でも、私がそれと同じくらい楽しみにしているのは、土門がときどき見せる優しさと人間っぽさ。最終話の「灰色の追憶」では、学生時代の土門がいかに研究室の仲間に支えられ、互いに励まし合って生きてきたのかが描かれていて胸が熱くなった。科学しか信じないと言っていた土門が人を信じることにしたなんてすごい。孤高の人だと思っていた土門にはこんな素晴らしい友がいたんですね。2025/10/02