出版社内容情報
教師の傍ら執筆活動を続け、ミステリ作家として一世を風靡した久宝寺肇(きゅうほうじはじめ)が癌で亡くなった。恩師である久宝寺の死と時を同じくして母校に国語教師として赴任した辻玲人(つじれいと)は、彼の遺稿を入手する。それは不可能状況での殺人を描く短編ミステリのプロットで、解決編のない状態だった。「探偵」になるのが夢だという女子生徒・あずさと協力して、遺稿の続きを探す玲人。しかし校内で女子生徒の死体が発見され、その死の状況は遺稿プロットとまるで同じだった。
内容説明
教師の傍ら作家として活躍した久宝寺が亡くなった。恩師である久宝寺の後任として母校に赴任した辻玲人は、彼の遺稿を入手する。それは学校での殺人を描くミステリーのプロットで、解決篇のない状態だった。「探偵になる」のが夢だという女子生徒・あずさと協力して、遺稿の続きを探す玲人。しかし校内で生徒の死体が発見され、現場の状況は遺稿プロットとまるで同じだった。遺稿を読んだのは限られた者のみ。その中の誰かによる見立て殺人が疑われるが―。切実でビターな学園ミステリー。作家の遺した不可解な殺人事件の計画と「挑戦状」
著者等紹介
藤つかさ[フジツカサ]
1992年兵庫県生まれ、大阪府在住。2020年に「見えない意図」で第42回小説推理新人賞を受賞。改題した同作を含む『その意図は見えなくて』で単行本デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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itica
64
教師であり小説家であった久宝寺が亡くなる前に遺したミステリ小説のプロット通りに生徒が亡くなった。この殺人事件を解明するため、自ら探偵に名乗り出た生徒のあずさ。と言うことだったが、私には非常に読みにくかった。生徒が教師を助手にして、しかし何か解明が進んでいるとも思えず、事件の真相も唐突に思えた。多分、生徒の痛々しいまでの純真さと、瑞々しい感性について行けなかったおばさん(私)のせいだと思うけれど。 2025/04/13
オーウェン
54
教師でありミステリ作家でもある久宝寺が遺した遺稿。 それにはミステリの結末が書かれておらず。 その謎に探偵志望の女子高生あずさが挑むが、学校内で遺稿に酷似した事件が起き殺人が。 女子高生が名探偵に憧れるという珍しい設定だが、それが遺稿に関係している鍵に。 練炭自殺の密室の謎にも答えが出ているが、何よりも名探偵になるという事実。 ラストのほろ苦さが印象的。2025/06/11
シャコタンブルー
53
読後あらためて装画を眺めた。当初は彼女達の笑顔と内容とのギャップに少し違和感を抱いたが、悲しみを分かち合えた無垢の友情の表現にも思えた。高校生でありながらも日常的に死を意識して生きることの絶望感が迫ってくる。悲壮感は無くただそこには死が存在しているだけのようにも思えた。「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」 犯行動機や証拠など突っ込みどころも多数あったが・・最後まで読ませる言葉の力があったように思える。次作も楽しみだ。2025/05/27
koma-inu
36
ある教師が残した遺作ミステリ通りの密室殺人が、学園で起こった。探偵になるのが夢である、高校生あずさと、教師の辻が、見立て殺人の謎に挑む。一応の答えが「解決篇」章で出るが、その後、ズバズバ引き出される学園の秘密が、圧巻。そして、最後に明かされる、なぜ名探偵か?の回収に納得。全編通じて、生徒や教師の脆くて切ない心理が描かれ、甘辛ビター青春ミステリが好みの方はハマると思います。ラスト1行の言葉と、冒頭→ラストのやりたいことリストの変化には、ジンとさせられました。2025/06/08
よっち
36
ミステリ作家として一世を風靡した教師・久宝寺肇が癌で亡くなり、恩師の仕事を引き継いで母校に国語教師として赴任した辻玲人が、彼の遺稿を入手する学園ミステリ。解決編がない短編ミステリのプロットを完成させたい編集者の依頼で、図書委員のあずさと共に解決編を探す中で発見された彼女の友人の死体。遺稿プロットと同じ状況にあずさが玲人と共に事件を調べ始める展開で、編集者の不審死や以前起きた玲人の恋人の自殺も絡めながら、明らかになっていく真相はほろ苦さもありましたが、大切なものものを守りたい優しさも感じられる結末でしたね。2025/05/06