出版社内容情報
穂刈は、クラスで起こるいじめに目を逸らすような、事なかれ主義の中学教師だった。
しかし小6の娘がいじめで飛び降り自殺をはかり、被害者の親になってしまう。
加害児童への復讐を誓う妻。穂刈を責める息子。家庭は崩壊寸前だった。
そんな中、犯人と疑われていた少女の名前が何者かにインターネットに書き込まれてしまう。
追い込まれた穂刈は、教育者としての矜持と、父親としての責任のあいだで揺れ動く…
内容説明
事なかれ主義で、クラス内のイジメにも目を逸らす中学教師の穂刈。ところが、穂刈の娘がイジメを苦に飛び降り自殺を図り、被害者の親となってしまう。隠蔽に走る学校。加害児童への復讐を誓う妻。穂刈を責める息子。手詰まりの末、彼はマスコミの誘いに乗り加害児童の名前を告げてしまう。情報は拡散され、炎上沙汰に。事態が動くかと思われた矢先、加害児童が死体で発見され…。二転三転する展開に息を呑む社会派ミステリ。
著者等紹介
中山七里[ナカヤマシチリ]
1961年、岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bunmei
105
中山作品には珍しく、小学校の苛めにフォーカスした作品。人の裏に隠された顔、そこには家族であろうと決して言葉や表情にできない本音の思いが潜んでいる。学校での苛めによる女児の自殺未遂事件と、その後に起こる苛め加害者の女児の殺人事件に関わる家族の、揺れ動く心理状態と事件によって生じた家族間の疑心暗鬼からの崩壊を描いている。本作では学校側が苛めに対して無責任で事件を隠蔽しようと描いているが、そこは全く現実的な描写ではない。殆どの苛めの根幹は家庭の歪に起因する事を、長く教育に携わった者として付け加えておきたい。 2025/06/15
のり
70
中学の教師を務める「穂刈」。妻も元教師。兄妹の4人家族。波風なかったはずの家庭が、娘の自殺未遂で一変した。穂刈自身も受け持つクラスのイジメ問題を抱えていた。それが娘の身にも降りかかっていたとは…学校の隠蔽体質。それも穂刈は痛い程理解していたが…そんな中、イジメの中心とされる児童が殺された。現場近くの防犯カメラに写っていたのは…被害者と加害者の扱いは簡単に変わってしまう。心労に加え追いかけてくるマスコミ。それにしても、あの状況下での妻の振る舞いは理解出来ない。何とか再生して欲しいものだが…2025/07/08
荒川叶
48
いじめ問題の難しさを改めて感じる。 いくら制度を作っても変らない、変えられない空気の現場。教育現場で方針が変わるたび、最終的な被害を受けるのはいつも児童。 いじめがなくなる事はない。大人、子ども関係なくあるから。 無くす事は出来ないけど、法律の専門家への相談、傷ついた心のケアが等具体的な対応の出来る場所を増やして欲しい。 当事者間だけの問題解決が難しい場合はしかるべき 対応で解決をとるのも1つの方法だと思う。2025/04/26
ワレモコウ
44
中学校教師の穂刈慎一は、クラスで起こるイジメ問題にも消極的。そんな時、小学生の娘の由佳が、イジメが原因と思われる自殺未遂を起こす。妻の里美とイジメの犯人探しをし、それをマスコミに流す。しかし、イジメ張本人の彩が殺されたところから、世間の矢は穂刈家に向けられ、挙句、中学生の息子の駿が参考人として警察に。ネットやマスコミ…今の時代を象徴するように物語は進む。嫌な結末で終わるが、結局は穂刈家は元には戻らないのだろう。2025/05/15
JKD
29
親子4人の平穏な家族で突如発生した長女の自殺未遂。原因は小学校でのイジメ。教師であり父である穂刈は慎重に解決策を模索しようとするが、元教師の母は過去の職業的倫理を捨て無鉄砲に行動を起こす。長男は冷静に状況を観察し両親の対応に意見する。その矢先にイジメの首謀である同級生が何者かに殺される。やがて加害者、被害者関係なく様々なメディアが加担し、ネット民の容赦ない総攻撃が始まる。家族という小さな集団の中でそれぞれが抱く必然が渦巻き、どす黒く濁っていくような不気味さ。まさに刺だらけの家。リアルすぎて恐かったです。2025/05/30