出版社内容情報
科捜研トップと言われる鑑定技術力と幅広い知識、そして、信じられないほどの愛想のなさで警察内部でも有名人の土門誠。科学鑑定に並々ならぬ熱意を捧げ、「科捜研の最後の砦」と呼ばれる土門は、遺体や現場に残された、少しの違和感も見過ごさない。そこに隠されているのがどれほど残酷な事実だったとしても、土門は必ず真実を追究する――。
『楽園の犬』『われは熊楠』など、次々と話題作を刊行し続ける気鋭の作家が描く、鑑定ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
293
頑固で口下手だが仕事の能力は抜群な人間にとって、同じような相手と結婚するのはマイナスの二乗かもしれない。自分の思いを言葉で表現するのが苦手なので、この相手ならわかってくれるのではと望んでしまうのだ。土門誠と尾藤宏香の夫婦関係は、そんな失敗が運命付けられていた。いくら仕事で功績をあげても人と人の関係がうまくいくはずがないし、まして自分を認め引き立ててくれた尊敬できる上司に裏切られたら心が壊れてしまうのだから。科捜研を舞台にしたミステリというよりも、生きにくさを抱えて苦しむ人の不器用さが真のテーマかと思えた。2024/07/16
starbro
291
岩井 圭也、3作目です。本書は、科捜研&科警研連作短編集、オススメは、「神は殺さない」です。本書で科警研の存在を初めて知りました。「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間だ」 https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322402000731/?srsltid=AfmBOopZ2mv5T00eJ6XhHVQxK028TiQWO4nZAQO-lApn0-O-V-o5it8B2024/08/15
名古屋ケムンパス
205
最終章「神は殺さない」の結末は甚くショッキングでした。「科捜研の砦」が盤石でなかった訳と前作「最後の鑑定人」で主人公の土門誠が「最後」になってしまった謎が明らかにされています。「科学に殉じ、科学に奉仕することこそが鑑定人です」と尊敬する直属の上司の加賀副所長に凄絶な決別の意を告げてしまいます。科学の解明の先には常に「神の領域」が存在するのです。「神様はねぇ、たまに想像を絶するほど残酷なことする」との副所長の嘆きは、タイトルの「神は殺さない」を極めて印象的にしています。2024/09/18
のぶ
191
「最後の鑑定人」では土門誠が警察を辞め民間の鑑定所を開いて、そこに訪れる依頼人の話だったけれど、本作では土門はまだ科捜研にいた。こちらは前日談の話ですね。土門は相変わらず性格的に変わっていて一筋縄ではいかないが、愚直なまでの科学的な検証に接する事で、彼と関わる人々に土門という人間に惹かれてゆく姿は、科学が示す客観的な真実に対する説得力の成せる技で流石だと思わせる。一方で物語は順風満帆一辺倒とはならず、彼の生き方の基本を揺るがす事件に戸惑う様は、生身の人間をも描く小説でもあった。2024/07/19
reo
186
「罪の花」「路側帯の亡霊」「見えない毒」「神は殺さない」以上四編が収録された連作短編集。いずれも土門がまだ科捜研に所属していたころの事件と、それらを彼特有の科学捜査で解決するというお話。ただ短編ではあっても読み応えがある著者氏面目躍如の一冊となっています。特に最後の「神は殺さない」は、何故科捜研を辞めるに至ったかを土門の苦悩とともに語っております。お薦めです😄2024/10/27
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