出版社内容情報
小楠の生きた人生六〇年は、日本の維新変革過程にすっぽりおさまり、日々激しく変化する中にあった。欧米列強の日本への開国要求は、あるいは日本の植民地化を招くかもしれない。そのような現実と向き合いながら、思想形成をしていく姿を、具体的に追いかけた。
小楠自筆史料を含む、豊富な新発見史料を駆使して、小楠の学問と思想と経綸の実像に迫りたいと思う。そして新しい国家と社会が模索され続けた維新変革過程に、小楠がいかに主体的に生きようとしたのか、その具体的な姿を描き出したい。(はしがきより、一部抜粋)
内容説明
民を慈しみ、世界の模範となる日本を目指した大思想家。吉田松陰、坂本龍馬ら英傑たちが畏れた幕末維新のキーパーソン。書翰や自筆草稿など新出史料から新たな人物像を描く。
目次
第1章 小楠の思想形成の序幕
第2章 江戸遊学と失意の帰国
第3章 実学党の結成と熊本藩政
第4章 ペリー来航と開国論
第5章 福井藩に活動の舞台を与えられて
第6章 文久期の幕政改革と横井小楠
第7章 沼山津に閑居
第8章 維新政権と横井小楠
補論 小楠の実学思想について
著者等紹介
猪飼隆明[イカイタカアキ]
1944年、福井県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。熊本大学文学部教授・大阪大学大学院教授を経て、大阪大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ohe Hiroyuki
4
熊本藩の逸材である横井小楠の生涯について、書簡などの一次資料を基に書き下ろされた書籍である。あとがきを見る限り、相当な気合をもって書かれた一冊であり、確かに読みごたえがある▼酒におぼれたり、士道没却事件を起こし士籍をはく奪されながらも福井藩に重用され、明治政府からは参与にも任命されるなど常に存在感を放っていた人物である▼儒学を通しながらも、固陋にならず、最新の国際情勢を分析し続ける姿勢は、幕末の多くの人間に影響を与えたのだと思うところである▼沼山津の横井小楠記念館は一度訪れたが、大変よいところであった。2024/06/14