出版社内容情報
「わかっちゃった。あなたもムーンライト・フリット(夜逃げ)でしょ」。人生の曲がり角、遅れてやってきた夏休みのような時間に巡り合った男女。高原に建つかつてのペンションで、静かな共同生活が始まる。
内容説明
旅の途中、拓海が立ち寄った元ペンションには、年齢も国籍もバラバラの4人の男女が暮らしていた。心地よい共同生活に見えたが、口に出さないだけで、それぞれ東京に戻れない事情があるという。拓海はフィリピン人のマリー・ジョイと気の置けない仲になってゆくが、彼女もまた、頻繁に訪ねる人との関係を明かしてはくれず…。八ヶ岳を望む高原を舞台に、向き合いがたい秘密を抱えた人々の葛藤と再出発を描く、あたたかな長編小説。
著者等紹介
中島京子[ナカジマキョウコ]
1964年東京都生まれ。2003年『FUTON』で小説家デビュー。10年『小さいおうち』で直木賞、15年『かたづの!』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、柴田錬三郎賞、同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、20年『夢見る帝国図書館』で紫式部文学賞、22年『ムーンライト・イン』『やさしい猫』で芸術選奨文部科学大臣賞、同年『やさしい猫』で吉川英治文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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優希
49
年齢も国籍も異なるメンバーのシェアハウスの物語でした。一見心地良い生活に見えますが、それぞれ口に出せない事情を抱えていることが、互いに向き合い難い秘密を抱えているということでしょうね。葛藤と再出発を描いたあたたかさと同時に、それぞれの秘密にドキドキしてしまいました。2024/04/18
kei302
47
軽快なのに社会問題がいろいろ出てくる。サクッと読めて、にやりとさせるラストがよかった。マリー・ジョイの台詞がシンプルで的確。拓海への捨て台詞?! 最高です。ニホンのオトコみな同じこと言う。でもマリー・ジョイは戻って来る(たぶん)そして、かおるさんも。文庫本解説は朝倉かすみさん。「ムーンライト・フリット/夜逃げ」した人々の「ムーンライト・イン」での同居生活の話。清里かな?2024/01/05
ざるこ
37
著者のこのふんわりとしたマイペース感がいい。何か事件が起こってても「あ、そう」みたいな雰囲気で受け入れてするすると読める。ガツガツとページを捲らなくて済むというか。物語は今は営まれていないペンションでの元オーナーとそこに集う4人の人間模様が描かれる。みんなワケあり。無職やら家出やら殺人未遂(?)やら。それぞれが頭の中であーじゃない、こーじゃない、悩んで悩んで。上手く回ってそうな赤の他人との共同生活の中で本当の家族との関係に悩むという対比がいい。結局マリー・ジョイが一番しっかり周りが見えてて感心しちゃった。2024/07/23
エドワード
36
バックパッカー・栗田拓海は、豪雨の中、ある高原の家にたどりつく。住人は、車椅子の老女・新堂かおる、介護士・津田塔子、看護師・マリー・ジョイ、主人の高齢男性・中林虹之助。拓海は壊れた屋根を修繕し、踵を骨折して2ケ月滞在する。この人々はどういう関係なのか?穏やかな生活から垣間見える事情。何回も出てくる「親子ほど、厄介なものはない。」の言葉。徐々にほどけていく秘密は決して無情なものではなかった。日本を外側から見るフィリピン人のマリーが現代日本を客観的に視せてくれる。一度は別れる彼ら。きっとまた会えると信じるよ。2024/01/21
マダムぷるる
25
各章の中のシーンごとに語り手が変わり、視点が変化していく。元ペンションに暮らす5人にはそれぞれにドラマが有り、背景がありちょっとミステリアスなようなムードが漂う。清里あたりをモデルにしているのかな、と思うような高原の空気感もムードを助長している。ハッピーエンドでもなければ落とし所があるようなないようなラストではあるが、こうして人々の暮らしは続いていくというラストってことかな。マリージョイのキャラクターが印象的。かおるさんの決断は意外だったけど天晴でもあるかも。親子って難しい、確かにね。2024/03/03
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