出版社内容情報
応仁の乱は、京の街を焼け跡にしようとしていた。
室町幕府八代将軍・足利義政は、京の秩序を守る責務から目をそらし、自らの美意識の顕現に挑んだ。
孤独な将軍は、何に苦悩し、何を実現しようとしたのか。
日本建築の源流となった“銀閣寺”建立の秘密に迫った歴史巨編。
内容説明
文化の力で、政治に勝つ―。室町幕府の将軍・足利義政は、京都東山の地に文化の象徴を生み出そうと、銀閣の造営を決意する。普請を阻むように熾烈な応仁の乱は泥沼化、将軍の権威は地に落ち、幕府の資金は底をつこうとしていた。弟の義視が敵方へ駆けこむという事件までが勃発し、事態はさらに混迷を極めていく。都を焦土にした「稀代の悪王」は、どうして銀閣に身命を賭したのか。比類無き美の巨人の素顔に迫った歴史巨編。
著者等紹介
門井慶喜[カドイヨシノブ]
1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。16年『マジカル・ヒストリー・ツアーミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、18年『銀河鉄道の父』で第158回直木三十五賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rokubrain
18
日本の伝統家屋の象徴である押板床 (床の間)、違い棚 (入れる象徴)、付書院 (出す象徴) という装置、 四畳半という中途半端な広さで孤独が思索により宇宙につながる空間、 そこに漂う わび、さび という精神、 これらを発明し日本文化の礎を築いたのは、銀閣の人、足利義政 (室町幕府八代将軍)だった。室町中期に生まれた文化的産物に歴史的な重要性の気づきを得た。 なかでも義政という人物のイメージが今までと逆転したのは個人的に極めて大きな「出来事」だった。2024/07/09
Y.yamabuki
16
足利義政と彼の創り上げた東山文化を描いた作品。義政当時の政治情勢、富子との関係、そして金閣を建てた会ったことのない祖父義満に対する感情などから義満の人物像を浮かび上がらせる。彼がどういう思いで銀閣を建てたのか、後世に何を期待したのか。共に銀閣の造営に当たった宗祇、村田珠光、善阿弥との会話を通し今に繋がる文化が、義政を中心にどの様に創り上げられたかが描かれ興味深い。義政の一生と文化論が上手く噛み合い、「わび さび」が、腑に落ちた。義政に対する見方が変わった作品。次に銀閣寺を訪れる時は、違った見方が出来そうだ2024/01/23
たつや
4
建築好きの門井さんだから、この銀閣を主人公にしたような作品を書いたのだろうか?面白かったです。義政にも興味が湧きました。2025/01/16
タカボー
4
足利義政は文化面では一流で、将軍職としては論外のイメージで、本書もそのイメージをそのまま書いてる。室町幕府の衰退はこの人一人のせいでもなくて、その前からの流れが凄く重要で(特に嘉吉の乱)、そこを丁寧に書いてくれてると思う。義政自身にあまり共感できない。将軍としてやるべきところは他にいっぱいあるだろうに。2024/11/10
hiyu
3
足利義政が中心となる流れではあるが、実は解説の方が自分にはより興味深く感じられた。もっとも文中に示されたわびさびの在り方についても唸らされるものがあったのだが。2024/04/18