出版社内容情報
横溝正史生誕120年記念復刊! 横溝正史の異色傑作!
内容説明
鮮血が飛び散る廊下で、血溜まりに突っ伏す寝巻姿の女。離れの部屋には、額をざくろのように割られ、凄まじい形相をした老婆が死んでいた。現場に駆けつけた等々力警部と名探偵・金田一耕助は聞き込みを始める。凶器は思いもよらない場所に捨てられていた。さらに70年ほど前、世間を恐怖のどん底に陥れた毒殺未遂事件と複雑に絡み合う。謎の因縁話に秘められた斬新なトリックを金田一は見破れるか。表題作に加え「女の決闘」を収録。
著者等紹介
横溝正史[ヨコミゾセイシ]
1902年、神戸市に生まれる。旧制大阪薬専卒。26年、博文館に入社。「新青年」「探偵小説」の編集長を歴任し32年に退社後、文筆活動に入る。信州での療養、岡山での疎開生活を経て、戦後は探偵小説雑誌「宝石」に、『本陣殺人事件』(第1回探偵作家クラブ賞長編賞)、『獄門島』『悪魔の手毬唄』などの名作を次々と発表。76年、映画「犬神家の一族」で爆発的横溝ブームが到来。今もなお多くの読者の支持を得ている。81年、永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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セウテス
89
【金田一耕助シリーズ】タイトル作品と「女の決闘」の2作中編。浅井美奈子は明治の毒殺魔として知られる八木克子の棺の中より見つかった、肖像画「支那扇の女」に瓜二つであった。彼女は八木夫人の家系に連なる者で、夢遊病の自分が寝ている間に殺人を犯したと思い込んでいる。意外な犯人というよりも、意外な動機に驚かされる。「女の決闘」の方が、謎解きとしては面白いだろう。ストリキニーネを使った毒殺で、犯人のトリックは気づきやすいのだが、本作もその動機こそ推理のしがいがある。謎解きは、自分的には直接現場でというのが好みですが。2022/09/19
coco夏ko10角
21
2編収録。金田一耕助シリーズ。高級アパートで洋な朝食を食べてる金田一ってなんか違和感あるなぁ。やっぱり前の家の方がしっくりくる。始まりは『支那扇の女』ワクワクしたけど、終わってみると『女の決闘』の方が面白かった。そういう動機だったか。2022/11/14
乃木ひかり
16
なかなか出会えなかった本が復刊と聞いて久々の横溝正史。表題作は面白いが辺見の死亡日のズレが気になる点ではある。曲者揃いの女の決闘も面白い。そして安定の解説中島河太郎。3月は壺中美人が復刊だがやはりあのキモカワカバーなのだろうか?2022/02/16
marty@もぶおん学
9
昭和32年夏、成城の高級住宅街の人気児童作家の邸宅で、彼の義母と女中が惨殺され、妻は自殺未遂を図った。犯人は夢中歩行癖のある妻なのか、アリバイ不明の夫なのか、はたまた成城で多発していた物盗りなのか? ストーリー展開はほとんど別物だが、背景に明治時代からの岡山の旧家間の因縁が横たわっていたり、夢遊病がモチーフとなっているところなどは「夜歩く」を想起させた。同時期(S32.12)に発表された「扉の影の女」と比べると、結末の意外性は本作の方が工夫されているが、プロセスの面白さは「扉の影の女」に軍配が上がるか。2024/01/07
nishiyan
8
表題作と『女の決闘』の2編が収録された本作。『支那扇の女』は稀代の毒殺魔を大伯母に持つ美奈子がある殺人事件に巻き込まれる内容。70年前の事件と現代が絡み合う因縁が面白く、犯人の真意が見えない展開はミスリードも相まってなかなかの読後感だった。『女の決闘』は英国人夫妻のさよならパーティーで起こった小説家殺人事件に金田一が挑む内容。ラストのある人物との往復書簡で真相に至る結末は意外感はあった。2022/09/16