出版社内容情報
永井 路子[ナガイ ミチコ]
著・文・その他
内容説明
壇ノ浦の戦いで九死に一生を得て寂光院に隠棲した建礼門院。彼女のもとに突然、後白河法皇が姿を見せる。平家に対する裏切りに一切の罪悪も感じない様に恐怖と憤りを覚える侍女に対し、驚くほど冷静な女院。彼女は何を思うのか。平家滅亡後を描く表題作の他、義経追討に名を挙げた男の顛末を描いた「土佐房昌俊」、「頼朝の死」など全6作を収録。鎌倉時代の権力の座を巡る複雑な人間模様と渦巻く陰謀に切り込んだ傑作歴史小説。
著者等紹介
永井路子[ナガイミチコ]
1925年、東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。65年、『炎環』で第52回直木賞、82年、『氷輪』で第21回女流文学賞、84年、第32回菊池寛賞、88年、『雲と風と』ならびに一連の歴史小説で第22回吉川英治文学賞、2009年、『岩倉具視 言葉の皮を剥きながら』で第50回毎日芸術賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あすなろ
100
読メでは記録なく、過去に一作品読んだか読まぬかの永井路子氏作品。鎌倉時代の初期をテーマにした短編集。先ずは永井氏の筆に圧倒感を抱く。ここまで人物やシーンが乗り移って描ける方だという事に。中身も知らぬ事多く興味深いのであるが、それ以上にその乗り移り的な筆致の方に心奪われた。また他の作品を折に触れて読んでみたいと思った。2022/06/19
けやき
63
短編集。「右京局小夜がたり」「土佐房昌俊」「寂光院残照」「ばくちしてこそ歩くなれ」「頼朝の死」「后ふたたび」の6編。「土佐房昌俊」と「ばくちしてこそ歩くなれ」がなんとなくユーモラスでよかった。「頼朝の死」では噂というものを改めて考えさせられた。2022/02/10
hrmt
34
久々の永井作品。大河ドラマに触発されて。平家〜源氏への移り変わりのこの時代は滅法ややこしいけど、面白さと世の儚さと混沌さが感じられて結構好き。立ち回り、口を噤み、盛えるもの、堕ちていくもの。歴史の表舞台に名が残る人々も、傍から見つめる数多の人々も。時代の狭間に生きて死していく人の世の無常。建礼門院の出家後が気になり手をつけた表題作は、空虚さの中に寂しくひっそりと佇む姿を思い浮かべた。子を亡くし、一族を失くし、ただ一人命永らえた生を過ごすには、それまで以上に無関心無感動であるしかなかったのではなかろうか…2022/05/09
ponkichitaro1
17
大河の鎌倉殿の13人の時代物が読みたくて、ならばまずはなんといっても『炎環』の永井路子先生だろうと… 6編の舞台となる地も性別も身分も口調も異なる語り手が呟く物語が浮かび上がらせる『鎌倉という時代のはじまり』にぞくぞくしました。 特に気に入ったのは『ばくちしてこそ歩くなれ』2022/02/19
kibita
16
ちょうど大河ドラマ「鎌倉殿〜」を観ているのでこの作品での事件、人物についてすんなり入ってきた。物語るのは、脇役の人々。女房であったり、頼朝の死にまつわる噂の中心にいる行方不明の姉を探す娘であったり。共に俯瞰的に見ることにより、歴史的事件が、人物がより鮮やかに浮かび上がる。短い短編なのにギュッと凝縮され、しかも読みやすい。表題作は恐ろしい程映像が浮かび上がる凄い筆致。今大河ドラマを観ている方にお勧めします。2022/06/29