出版社内容情報
〈母を殺したのは、志村さん、あなたですね〉一通のメールが、男の記憶をよみがえらせる。メールの送り主は、かつて愛した女性の息子だった……(「雪が降る」)。不世出の偉才・藤原伊織による至高の6篇。
内容説明
ギャンブルに溺れ、自堕落な日々を過ごす会社員・志村。彼の元に、1通のメールが届く。“母を殺したのは、志村さん、あなたですね”メールの送り主は、かつて愛した女性・陽子の息子だった―。訪ねてきた少年とともに、志村は目を背け続けてきた彼女との記憶を辿り始める。その末に明らかになる、あまりにも切ない真実とは(「雪が降る」)。不朽の名作『テロリストのパラソル』の著者による、6篇を収録した短編集。
著者等紹介
藤原伊織[フジワライオリ]
1948年、大阪府生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。広告代理店に勤務する傍ら、執筆を始める。85年「ダックスフントのワープ」で第9回すばる文学賞を受賞。95年、『テロリストのパラソル』で第41回江戸川乱歩賞を受賞。同作品は翌年、第114回直木賞も受賞した。2007年、食道癌のため59歳で永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきら
33
何かのトリックとか、どんでん返しがあるというよりも、ただただ純粋にひとつひとつの物語が面白くて、楽しめました。 表題の「雪が降る」は特によかったなあ。 2022/01/13
シキモリ
25
ハードボイルドの名手として名高い著者だが、私は今作が初読み。全六作品収録の短編集で、どの作品にもグッとくるものがある。ロマンチックで切ない表題作も捨て難いが、運命に翻弄される男の悲哀を描いた「台風」と王道的な任侠小説「紅の樹」が私のお気に入り。飲酒運転に対する前時代的な価値観に違和感を覚えないわけではないが、それを補って余りある魅力が満載。黒川博行氏(著者のご友人)による解説の言葉をお借りするなら、余分な贅肉を削ぎ落としたシャープな文章とそこから滴り落ちるような情感が正にそれ。他の作品も是非とも読まねば。2022/01/03
ソラ
13
亡くなるのが早すぎた作家さん。もっといろいろな作品を読みたかった。2022/01/02
こばゆみ
11
2007年に逝去された作家さんの、25年くらい前に出た短編集の新装版ということで、なんとなくの古さはあるけれど楽しめた。全編通して男女の慈愛を感じるお話たち。「男性が女性のために身を挺す」描写って、最近あんまり接する機会ないから新鮮。2022/02/10
冬野
7
十年以上前に長編を読んで好きになった藤原伊織さん。短編集が新装版で出ていたので久しぶりに藤原さんの小説を読んだ。硬質でいながら読み手の感情を揺さぶる文章と話運び、やっぱり好きだ。人生のやるせなさ、悲哀、過去確かにあったきらめきが胸に迫ってくる。「トマト」みたいな幻想的な作品も書かれていたんですね。「台風」も「銀の塩」も「ダリアの夏」も好きだけれど、「雪が降る」「紅の樹」が特に好き。登場人物が軽率に飲酒運転をしてしまうのは時代だなあ…(ヤベエ時代だ)。人間味にあふれた黒川博行さんの解説も良かった。星:5/52022/01/10