内容説明
自立のために雑誌記者として働き始めた井沢恵子は、上司からのセクハラや経営方針の改悪を苦に退社を余儀なくされた。今後の身の振り方を模索する最中、旧知の女性作家・梶村久子が湯河原の温泉旅館で急死したとの情報を耳にする。ところが、地元警察は女性が急死した事実はないと断言。騒動の裏には、恵子を翻弄する男たちの醜い欲望が関わっていた。醜聞にまみれた文壇を題材にした、松本清張による迫真のロマンス長編。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年、福岡県生まれ。印刷工を経て朝日新聞西部本社に入社。53年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。56年、朝日新聞を退社し、作家生活に入る。67年、吉川英治文学賞、70年、菊池寛賞、90年、朝日賞を受賞。社会派ミステリーを始め、歴史・時代小説、古代史・近現代史の論考まで執筆は多岐にわたる。作家生活約40年の間に、随筆や日記も含めて約1000編の作品を発表し、編著も含め約750冊の著書を刊行した。92年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Aya Murakami
61
アマゾン購入。 奥湯河原で死んだ(?)梶村の事件を嗅ぎまわることになった主人公恵子。あ…、実は梶村の死って実は…。まぁラストは結局死んじゃうんだけど…。それにしても金に性欲に男女共ども人間って汚いなぁな話でした。そして清張先生って出版に使いつぶされる作家の話を書くような…? 主人公恵子の方のラストは…、仕事を辞めて再婚するのはいいけどその男はやめておいた方がいいぞ。2024/12/23
yonemy
4
こちらは1962年の新聞小説で、60年前の日本社会。男も女も手段は択ばず実利主義で、さすが戦争を経験した世代なんだと感心。「卑怯な行いを隠蔽し、知られなければOKなんて、良心の呵責はないのか!」なんて思うあまちゃんな私には生き辛そうだ。人間の本質はそう変わっていないのだろうが、現代は少なくとも倫理やコンプライアンスで己の欲望をくるむ必要がある社会。それが体裁で終わらなければ、人にも自然にも地球にも優しいユートピアのような世界になるはず。できるだけ長生きして、さらなる変化を見届けたいな☆ 2023/02/22
13sakura
3
最後がなんとなく納得できない感じだ。あの男とまさか再婚するとは。複雑な心境にさせられた。まだ山根氏のほうが良かったのに。。。2022/01/28
るつ
2
これぞ昭和の小説といった内容。女性の自立がとても難しかった時代だとは思うけれど、それにしても出てくる男性がクズばかりで驚いた。ギラギラのセクハラ男か、覇気のない男のどちらかしか存在しないのだろうか。主人公にもあまり共感できなかったけど、サクッと読むにはまあ楽しめる作品だった。2023/08/07
四男の母
1
2時間ドラマのようで、上下一気読み。出てくる男が酷すぎる。いい男なし。昭和の時代、女性はかなり厳しい環境で働いていたのね。一番腹がたったのは、もしかしたら恵子の最後の決断かも。2023/02/20