内容説明
時は大正末期。伊達政宗公を遠祖にもつ伯爵家に、九州から一人の男がやってきた。男の名は伊達麟之介。幾多の学校を転々としては放校退学を繰り返す無法者ながら、胸がすほどの豪傑さで、人々を惹きつけていく。しかし、麟之介が放った拳銃の一発が、彼の運命を劇的に変えていく―。最後の無頼派・檀一雄が、実在の日本人馬賊をモデルに描いた壮大なスケールの長編小説。発表当時、各方面から大絶賛された名作が甦る。
著者等紹介
檀一雄[ダンカズオ]
1912年、山梨県生まれ。東京帝国大学経済学部在学中に、処女作「此家の性格」を発表。51年、『真説石川五右衛門』『長恨歌』で第24回直木賞受賞。最後の無頼派作家といわれ、ベストセラーを次々と発表した。76年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みきだい
7
虫干し読書。10年来家にある本。読書の虫になりかけた13の頃、親父から貰った(借りた)本。亡伯父との思い出も相まって年に数回読み返す本の1冊。海外雄飛、少年が日本狭しと海を越え、満州で馬賊になっていく物語。ピストル、馬、語り口が活劇調な文章の進み方、と読んでいます。主人公は朴念仁というか素朴というか、一種の愛着が湧きます。ふとした瞬間に見せる表情は特に。けれど愛着が湧くというとその先生役の方かな、天道我に有れば百万人トイエドモ我ユカンな心持で生きてみたいものです。夢の途中で生き生きとする少年にわくわくです2013/07/14
pyonko
4
実在の人物である伊達順之助をモデルにした小説。彼の分身でもある麟之介が奔放な人物なのはわかるのだが、そう育った背景はあまり語られず、どうもただの無鉄砲にしか見えて来ない。2015/01/17
アヴィ
1
日清戦争以降日本から大量に流れこんだ大陸浪人と呼ばれる人達。なかには馬賊に参加し、騎馬とモーゼル拳銃で闘い続けた男達がいた。本作はおそらく日本人馬賊では最も有名な伊達順之介をモデルに書かれた小説。日本人であることをあまり表に出さず中国人になりきって馬賊王となった小日向白朗と違い、どこまでも日本人であり続け、戦争や日本軍との関わりから離れない主人公。下巻へ。2025/01/13
のうみそしる
1
檀の語り口が軽快かつ巧妙でアッという間に読める。「ヨウとして」とか「おイトマするわ」とか、カタカナの見事な活用っぷり。主人公がしゃべらなすぎて、師匠逸見の豪放磊落さに目が行く。2016/12/03
旅芸人
1
壇一雄は戦中、従軍新聞記者を勤めた経験があるらしいけれど、国内で文学奉国会には参画しなかったのかな。五味康介同様、あの時代の検証からは完全に背理した印象を受ける。2014/10/10