出版社内容情報
障がい者施設のベッドに“かたまり”として存在するきーちゃん。施設の職員で極端な浄化思想に染まっていくさとくん。二人の果てなき思惟が日本に横たわる悪意と狂気を鋭く射貫く。文学史を塗り替えた傑作!
内容説明
ベッドにひとつの“かたまり”として横たわり、涯てなき思索に身を委ね続けるきーちゃん。世話をする施設職員のさとくんは、ある使命感に駆られ、この世の中をよくするため凶器を手に立ち上がる―。社会に蠢く殺意と愛の相克、「にんげん」現象の今日的破綻と狂気を正視し、善悪の二項対立では捉えきれない日本の歪みを射貫く。実際の障がい者施設殺傷事件に想を得た、凄絶なる存在と無の物語。
著者等紹介
辺見庸[ヘンミヨウ]
作家。1944年、宮城県生まれ。早稲田大学文学部卒。70年、共同通信社入社。北京特派員、ハノイ支局長、編集委員などを経て96年、退社。この間、78年、中国報道で日本新聞協会賞、91年、『自動起床装置』で芥川賞、94年、『もの食う人びと』で講談社ノンフィクション賞受賞。2011年、詩集『生首』で中原中也賞、翌12年、詩集『眼の海』で高見順賞、16年、『増補版1★9★3★7』で城山三郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
坂城 弥生
43
意味不明な妄想の話で最後まで読むのは無理でした。2021/04/20
どぶねずみ
36
「津久井やまゆり園」事件を思い出した。私自身に社会的弱者に対する偏見が全くないと言ったら嘘になる。自分は障がいをもつ人たちに対してどう接して良いのかがわからないし、接する機会もこれまでになかったから、つい目を背けがちだ。本書には下品で汚いシーンも数多く表現されているし、知能を表現すべく漢字を積極的に避けた書き方も目立ち、非常に読みにくく、何度も挫折しそうになったが、自分が一社会人として避けてはならないことと認識し、親の介護などの将来を見据えて読み通した。施設運営に携わる方々が少しでも楽になるよう祈る。2024/07/22
ちょん
25
やっと読み終わった!読み切るのに時間がかかってしまいましたが読みたかった本。相模原の事件をモチーフにしてるんだよね?文中にもあったしあの事件の本当に怖いなと思うのは犯人が「悪意は無い、善意でやった」ことだと思ってます。怖くてこの事件を直視できない。そう思うと、本作の散文のような書き方は読みにくく分かりにくかったけど良かったのかも、だってそれが人の気持ちと考えなのだし、言葉でキレイに分かりやすくまとめれるものじゃないもんなぁ。映画もどうなってるのか見てみたい。そしてタイトル。良きです。2023/11/11
rakim
17
辺見さんの罹患された病の事も知っていました。同じではないけれど私もその数年後に集中治療室に数日という入院をしたことがあります。周りからは意識が無く見えているのに私には周りの人の立居や会話も皆聞こえている、という経験をしています。だからきーちゃんに憑依していたのじゃないか。きーちゃんは辺見さん自身じゃないのか。『あのときのわたしならかみさまがきたとおもったかもしれない』。なんだか長い詩を息もつけずに一気読みした感覚です。もちろん実際の事件の当事者それぞれの状況、思いは想像できないから別物だけれども。2025/06/10
Tomomi Yazaki
17
読む前と読んだ後で自分がどう変わるのか不安でならない。本書を読むにはそれなりの覚悟が必要です。意思表示の出来ない人間。看護者の暴言や虐待もまた、彼らにとっては得難いコミュニケーションのひとつ。痛いけど嬉しい。何もできないより楽しい。そして彼は実行に移す。優生思想の具現化として。彼は狂ってはいない。狂人が総理大臣に手紙は出さない。その総理も凶弾に倒れたが。やったことは殺人でも、生まれる前に殺すか、生まれてから殺すかの違いだけ。昔の見世物小屋は、今はパラリンピック。そう、本書は稀にみる傑作なのです。2024/02/07
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