内容説明
神のように姉を慕い、その恋人を共有したいと誘惑する女、姉妹と寝ながら、死に取り憑かれる劇団演出家、感情を外に出すことができず、口無しと呼ばれる青年、女装趣味の年下男に入れあげる華道の家元、縄で肉体を縛って心を炙りだそうとする縄師…底なしの虚無を見すえながら、生のリアルな感覚を取り戻そうともがく人々に心の平安は訪れるのか―。
著者等紹介
辻仁成[ツジヒトナリ]
1959年東京都生まれ。89年「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞し、作家としてデビュー。以来、文学をはじめとして、音楽、映画など、様々な分野で活躍を続けている。97年『海峡の光』で第116回芥川賞を受賞。99年には『白仏』のフランス語翻訳本『ル・ブッダ・ブラン』で日本人として初のフェミナ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
84
濃厚でした。5人の男女の交錯して歪んだ雰囲気が耽美的でした。どろりとした世界観と心に寄り添っていく空気感が絡み合うのに官能的な情緒を感じました。死に囚われる危うさと死後の世界と生きている世界が重なっているというのが美意識として表現されていると思います。心はどこにあるのかという問いかけが面白い。現実的でない不思議な夢のような場所に足を踏み入れたような感覚になりました。暗い想いが美しいです。2016/04/22
あつひめ
70
心ってどこにあるの?永遠のテーマといっていいような事を投げ掛けてくる。どこか投げやりに生きているようで…アリ地獄みたいな自分の意思が通用しないような世界で生きている人たち。表現がまどろっこしいけど、なぜか美しさを感じる部分があったり。これは映像を交えた方が、本当に伝えたいことがわかるような気がした。縄師という呼び名があるのを初めて知った。2014/08/25
美紀ちゃん
59
「すごい!」という感想。縄セラピーもすごい。どの話も非日常的で狂っている感じがして、引き付けられた。登場人物みんなおかしい。そこがこの話の魅力。2014/05/21
ちゃんみー
43
辻仁成さんのは柄にもなく好んでよく読んでいます。華道家の奥さんと縄使い?の元旦那と娘達、そしてそれを取り巻く人達の、少し理解に苦しむ普通でない物語。いつも"愛"がテーマに小説を書いてる人だと思ってましたが、これも"愛"?縄で縛られると心が解放されるのだろうか??とその部分だけに興味をそそられ読みました。2014/05/20
Maybe 8lue
42
天使のような愛しい姉に対抗する自分らしさの悪魔を宿した陽菜は姉の死の原因である優児を撃ち殺すため文哉に拳銃を探して貰うもその銃口は五郎に縛られた自分に向く。「私が殺したんです。仕向けたのは私なんやから!」「これでやっと亜紀ちゃんの所に行ける。あなたに感謝します」心が解かれる、ここにも醒めながら見る夢があった。五郎に縛られるというのが優児との隠喩に思えて文哉が惨いなぁと外の豪雨を感じながら読んだ。昨日までの台風の記憶は雨と風の音と、この話が一式となって引き出される事でしょう。2014/08/04