内容説明
カルナバルの国、ブラジル。初めて一人で映画を見にきたアリコは、右目は翡翠色、左目は水色の少女に声をかけられる。名前はナーダ、「なんにもない」という名の少女。何者にも縛られず、自由気ままな彼女は、周囲の人と打ち解けられないアリコの目にうらやましく映る。ある日、ナーダに誘われた食事会で、ジットという青年に出会う。ナーダに会っちゃだめ…と言われつつも、自分の気持ちに嘘がつけないアリコは、ジットと会っていくうちに、ナーダの秘密を知っていき―。青空の下、サンバの季節と共に、大きな波がやって来る!「魔女の宅急便」の著者が描く、ブラジルに住む少女の成長物語。
著者等紹介
角野栄子[カドノエイコ]
東京生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。25歳からのブラジル滞在の体験を描いた『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』で作家デビュー。1982年『大どろぼうブラブラ氏』で産経児童出版文化賞大賞、84年『わたしのママはしずかさん』で路傍の石文学賞、『ズボン船長さんの話』で旺文社児童文学賞、『おはいんなさい えりまきに』で産経児童出版文化賞、85年『魔女の宅急便』で野間児童文芸賞、小学館文学賞、IBBYオナーリスト文学賞、巖谷小波文芸賞など多数受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶんこ
55
角野さんの処女作を読んだ後だったので、同じブラジルが舞台と知り楽しみでした。日本人の父とポルトガル人の母との間に産まれたアリコ。本当は双子だったが、アリコだけが産まれてきたことを後ろめたく思って育ってきたのか、全てに後ろ向きな女の子が、不思議な少女ナーダと知りあい変わっていく。自分にとっての世界の始まりを探し当てたようなラストが良かったです。あとがきにブラジル時代の様子が少し書かれていて、いささかの違和感。角野さんは結婚したてのご夫婦としてブラジルに住まわれたのでは?2019/02/21
エンリケ
49
リオデジャネイロを舞台にしたちょっと幻想的なお話。主人公の少女アリコの成長物語。陽気な人達の中にあって一人殻に閉じ籠るアリコ。おそらくは母の死をきっかけに、どこか罪悪感を感じて生きているのだろう。そんな彼女を翻弄し、外に連れだそうとするナーダ。彼女のアリコに対する心情も複雑そうだ。嫉妬と愛情が入り交じった気持ち。時にそれは意地悪く発露してしまうが、二人の絆は強固。亡き母への憧憬。謎の少年への淡い恋。少女らしい心の振幅の描き方はさすが。カルナバルの怪しい一夜の体験を経て、アリコの成長にほっとして読了。2016/08/19
飛鳥
31
とっても面白くて感動的で良かったです。ブラジルの露リオデジャネイロに住む15歳のアリコはとっても可愛くてモテル女の子なのに内向的な女の子。赤毛のナーダに声を掛けられ強引に彼女のペースに引き込まれながらもナーダに惹かれるアリコ。 ナーダの正体とアリコとナーダ二人が好きなジットが幽霊とナーダに言われながらも惹かれるアリコの悩みながらもジットに惹かれる姿が良かった。サンバのノリとブラジル音楽の明るさも読んでいて伝わってきて楽しかったです。2017/03/26
ここまま
26
昨年講演会で拝見した角野栄子さんは、銀髪と同じ色の明るいグレーのスーツに赤いバラのコサージュ同じ色のルージュ。洗練されてるけど、どこか少女のような可憐さがあった。母を亡くした少女のころ、職人の父のこと、そしてブラジルで会った女性のことを物語に書きたいとおっしゃっておられた。ああ、これが。サンバのリズムに彩られたこの物語には、角野さんの思いと人生がくっきりと映し出されている。『闇があるから、光がより強く輝く』心の柔らかな場所を描くときはいつも少女の気持ちに戻れる角野さんを、やはり素敵な作家さんだと再認識した2014/07/30
ぱせり
21
もしかしたら、この世は、わたしたちが考えているよりもずっと賑やかなのかもしれない。「世界の始まりへの旅」は、戻ることではないのだ、という言葉が心に残る。光る星と闇の星の話も印象的。光と闇とが手を携えることで越えられることもあるのだ。開かれるものがあるのだ。シャカ シャカ シャカ シャ…のリズムが心地よい。2014/05/23