出版社内容情報
日露戦争の戦費調達を命じられた高橋是清は、ロンドンで日本国債を売り出し、英語力と人脈を駆使して成功を収める。蔵相、首相をも歴任、金融恐慌の鎮静化にも尽力するが、経済を破壊する軍国主義の波が押し寄せる。
内容説明
前例にとらわれない柔軟な発想と、現場経験に根ざした解決能力を身につけ、銀行家として踏み出した高橋是清。日露戦争の戦費調達という使命を帯び、ロンドンで極東の新興国・日本をアピール、人脈を駆使して日本国債の売り出しを成功させる。以後、昭和金融恐慌の鎮静化、世界恐慌後のデフレ脱却など、危機のたび手腕を振るった不世出の財政家は、なぜ二・二六事件の凶弾に倒れなくてはならなかったのか?
著者等紹介
幸田真音[コウダマイン]
1951年生まれ。米国系銀行や証券会社で、債券ディーラーなどを経て、95年『小説ヘッジファンド』で作家に。テレビやラジオでも活躍。政府税制調査会、財務省・財政制度等審議会、国土交通省・交通政策審議会の各委員など公職も歴任。2010年よりNHK経営委員会委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
159
後半の中心はやはり、経済関連の話題が多くなり著者得意の国債の話も出てくるのでかなり力が入っているように感じました。是清が八面六臂の活躍をする様子が描かれています。日銀総裁、大蔵大臣、総理大臣を経験して2.26の兇刃に倒れます。惜しい人材でした。なくてはならない役割を果たしたということなのでしょうね。どうも読んでいて是清というと西田敏行さんの顔が浮かんできます。たぶんドラマの「坂の上の雲」の影響でしょうね。2016/10/12
クリママ
58
日露戦争。戦争には莫大な費用がかかることに気づかされる。日銀副総裁の是清が、そのためのロンドンでの外債発行に成功する。その後、大蔵大臣となり、政治にかかわっていくことになる。海外を知り、国のため善かれと信じることを、私心なく、真っ向から語り、突き進む。まだ11歳だった横浜時代からの人脈も、彼の人柄によるものか。残りのページが少なくなる。それは二・二六事件が近づいているということだ。自身の日記や緻密なメモなども参考に書かれた作品。外側から見た是清像は少ないが、その魅力的な人柄、功績を知ることができた。2019/07/25
sayan
54
著者(幸田)の得意とする分野でもあるのか、下巻は緻密な記述と印象を持つ。日銀副総裁として、戦費調達(戦時外債の公募)を英国で成功させる場面はライブ感(緊張感)に溢れ圧巻。危機に直面(いや引き受ける)度に、自ら学び・考える作業の積み重ね(それも膨大な量)が局面での解決に導く。が、何も全て一人で抱えない。行き詰ると、相手と直接対話を通じて解決する場面は全編を通じて複数あり刺激的だ。個人的には、こういう人たらしさを含め、秀吉と似通ってしまう…。一方で時々垣間見える家族を含めた周りの苦労は相当だったんだろうなと。2019/09/23
Willie the Wildcat
39
相場を原点!?となる金融界。日々の学びが粗さを削る。竹を割った性格と童顔(?)が識者を魅了。日露戦時の外資取得が真骨頂!特に、海外を相手の交渉力を身につける過程が興味深い。人間性に基づく人間関係。1人1人との出会いが糧。賛否両論の施策もあるが、”最期”まで一貫した時勢に屈しない姿勢も潔い。念頭は常に国!金融を軸とした大戦を振り返る視点。確かに『天佑』とも言えるが、そればかりでもあるまい。蛇足だが、品と直の凛とした言動に、少なからず哀しさともどかしさを感じる・・・。2014/03/29
onasu
34
日露戦争の戦費調達のための外債発行。教科書などでは、サラリと触れられるだけのところに壮大なドラマがあった。その筋書き、正に「天佑なり」 昨今、財政再建などで、よく名前のあがる高橋是清。日銀西部支店から始まった国家財政への関与は、後にメチャ振りとも言える海外での戦費調達へ。何の勝算もなく倫敦へ向かうも、人脈を拡げ、債券発行の糸口を探り、終には成し遂げる。 後に、蔵相を七度、総理大臣にも。富国と節度ある国防を国際的見地からも求めたが…。 氏の軌跡を辿ることで、識見を得なくては。時は進んだのだから。2013/07/28