出版社内容情報
『GOSICK』『伏』の著者がおくる、ひと夏の少女物語!
あたし、月夜は18歳。紫の瞳を持った、無花果村のもらわれっ子。誰よりも大好きだったお兄ちゃんに死なれてから、あたしはどうもおかしくて…少女の思いが世界を塗り替える。そのとき村に起こった奇跡とは!?
内容説明
「あの日、あの瞬間がすべて。時間よ、止まれ」あたし、月夜は18歳。紫の瞳、狼の歯を持つ「もらわれっ子」。ある日、大好きなお兄ちゃんが目の前で、突然死んでしまった。泣くことも、諦めることもできない。すべてがなんだか、遠い―そんな中、年に一度の「UFOフェスティバル」が。そこにやってきた流れ者の男子・密と約。あたしにはどうしても、密がお兄ちゃんに見えて―。少女のかなしみと妄想が世界を塗り替える。そのとき町に起こった奇跡とは。
著者等紹介
桜庭一樹[サクラバカズキ]
2000年デビュー。07年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひめありす@灯れ松明の火
169
月夜は奈落のことが、えいえんにだいすきだからね。ピーナッツバター味の甘ったるい口づけが、その悲劇の始まりだった。血の繋がらぬ兄と妹が犯すただ一度だけの禁忌。花の咲かない無花果の葉陰。隠すべき秘密は顔か胸か、それとも下腹か。原罪に揺れ、兄の面影を探して楽園を追放され、そして飛び越えた現幽の境界。無花果の葉が欠片を隠し愛情と秘密が奏でる調べ次第に乱れて織り重なり、奈落と密と月夜のパ・ド・トロワは狂い舞う。文字通り奈落に堕ちた月夜。そこから見上げる出口はきっと、満月の光とよく似ている。貴方を思って泣けばよかった2013/04/29
くりきんとん99
145
久しぶりの桜庭さん。兄・奈落の死が受け入れられない義妹の月夜。最初から最後まで月夜が見てる夢を読んでいるようなそんな感覚だった。奈落の葬儀の後は、ずっと、ふわふわした感じ。その後の月夜が気になる。 それにしても、桜庭さんの作品に出てくる登場人物の名前って・・・スゴイ。2012/11/17
風眠
140
無花果町で育った、もらわれっ子の月夜。大好きなお兄ちゃん・奈落のお葬式から物語は始まる。泣くことも、諦めることも、落ち込むこともできない月夜。忘れるなんてしたくないという月夜の気持ちと、まだ成仏しきれない奈落の気持ちが呼び合う。コンビニの駐車場で、紅茶のお砂糖で、リンリンって鳴る自転車のベルで。無理に忘れることはない、少しずつ、ひとつずつ、自分の中でお別れしていって、そしてやっと泣ける準備が整うのだろう。それにしても桜庭女史のネーミングセンスは色んな意味ですごいな。苺苺苺苺苺で「いちご」とか、密と約とか。2014/01/26
エンブレムT
138
綺麗な花をポキリと手折る。そんな感じに物語の核になる部分は単純で、でもその膨らませ方は不思議なくらい歪で、その味付けはドロリと濃く甘い。「桜庭作品を読んでるなぁ」と随所に感じられる作品でありました。紫色の瞳を持つ美少女・月夜には、血のつながらない父と2人の兄がいる。物語の冒頭で既に事は起きている。月夜の1つ年上の兄・奈落。女の子から絶大な人気のあったお兄ちゃんが、19歳でこの世を去っているのだ。誰もが微妙に本当のことを言わないまま進んでいくミステリーのような空気があるため、ひたすら真相が気になりました。2014/07/20
sk4
130
大好きな義兄を亡くした女子の青春小説・・と捉えてしまうと、本当に何かイラつく女の生態見せられたわ~と感じてしまうかもしれませんが、桜庭一樹という作家の特性を考えるに、これもセカイ系の描写の試みなんだということで腑に落ちる。 義兄、奈落のセカイに内包されframeを一部共有していた月夜のセカイ。奈落の死で月夜はそのframeの欠損を、奈落の亡霊を存在させることで補完する。そして最後、闇に飲み込まれる月夜にセカイを取り戻させるのはまさかのハッピー・エンドゥ苺苺苺苺苺。 私はこの本、シンクロ率120%でしたw2013/08/16