内容説明
「兄妹五人あって、みんなロマンスが好きだった」。退屈になると家族が集まり、“物語”の連作を始めるのが習わしという風変わりな一家、入江家。兄妹の個性的なキャラクターと、順々に語られる物語世界とが重層的に響きあうユニークな家族小説「愛と美について」ほか、「ろまん灯篭」「秋風記」など、バラエティに富んだ秀作、計七篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
71
昭和14~16年の7篇収録。「秋風記」冒頭に詩が引用され、読後、改めて読むと主人公が終いに持った心情を透かして見れたように思えた。女性Kとの関係に対する気持ちが仄かに残る。トラタタ、トラタタ、リズミカルな文章や省略された思わせぶりな会話がいい。「ろまん燈籠」リレー創作が楽しそう。変幻自在の文体。こんな小説もありなのだなあと感服。家族みながユニークでそのやり取りに吹きっぱなし。「女の決闘」森鴎外訳の小説をDAZAIが脚色。ノリのいい文章、そして面白い創作の試み。著者の多彩で意欲的な小説作りを味わえた作品集。2019/06/10
桜もち
63
走れメロスにしろ、ろまん燈籠にしろ、清貧譚にしろ、太宰は古今東西の物語から空想を膨らませて創作するのがうまい。古典は基本と思わせてくれる。どこからどこまでが換骨奪胎か、分からなくして読者を撒いているのもすごい。斜陽みたいな長編も良いけど短編も良い。読んでるだけで、かなわない。太宰がラプンツェルの話の続きを書いてるなんて知らなかった。しかもこれが滅法おもしろい。結婚から始まる苦痛な毎日をこれでもかって。結婚したくなくなるじゃん。なんで心中したんだろう。生きるって言ってたのに。2017/05/29
inami
28
◉読書 ★3.5 短編7作品。映画監督の岩井俊二氏の解説がとてもしっくりくる・・各作品を「エロス(生)」と「タナトス(死)」の相剋の図式で解説していて実に分かりやすい。岩井氏は【高校生の時に読んだ『人間失格』、「恥の多い生涯を送って来ました」という一行に身震いし、これは俺だ。俺の話だと思って太宰にハマり、『人間失格』は障害記念すべき一冊となった】と・・さらに「太宰が好きになるかなれないかは、この一点に尽きるのではないだろうかと・・自分は、「人間失格」含め7冊ほど読んだがそこまでハマりきれてはいない 笑2020/05/21
JUN
20
試行錯誤して、新しい手法に試みている感じは受けたが、イマイチ心が動かされなかった。7作の短編集。「秋風紀」、「新樹の言葉」、「愛と美について」、「ろまん燈籠」、「女の決闘」、「古典風」、「清貧譚」。個人的には「秋風紀」が一番良かったかな?2015/02/14
多田幾多
20
太宰治の短編集。「新樹の言葉」や「愛と美について」、「ろまん燈籠」は読んでいてクスッというか、和んでしまう。あんな兄弟、家族はいいなぁ・・・。おじいちゃんかわいいww2013/06/21